新開発した高温超電導マグネットに用いるコイル(出所:鉄道総合技術研究所)
新開発した高温超電導マグネットに用いるコイル(出所:鉄道総合技術研究所)
[画像のクリックで拡大表示]
次世代フライホイール蓄電システムのイメージ(出所:鉄道総合技術研究所)
次世代フライホイール蓄電システムのイメージ(出所:鉄道総合技術研究所)
[画像のクリックで拡大表示]

 鉄道総合技術研究所と古河電気工業は3月10日、古河電工の子会社のスーパーパワー社が製造した、イットリウム系の第2世代高温超電導線材を用いた大型フライホイール用の高温超電導マグネットの開発に世界で初めて成功したと、発表した。新開発したマグネットは大容量の「超電導フライホイール蓄電装置」の中に組み込み、2015年に山梨県甲府市米倉山に建設するメガソーラー(大規模太陽光発電所)との間で連系試験を開始する予定。

 NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)による「安全・低コスト大規模蓄電システム技術開発」プロジェクトの成果で、クボテック、ミラプロ、山梨県企業局との共同研究となる。山梨県では、超電導フライホイールとの組み合わせによる系統連系試験用に、1MWのメガソーラーを建設中で、運転開始後は、実証試験に向けた基礎データの取得を開始する予定。

 「フライホイール蓄電システム」は、装置の内部にある大型の円盤(フライホイール)を、メガソーラーなどの余剰電力を使って回転させることで蓄電し、曇天により発電量が減少した際に、その減少分を補填するように発電する。「電池」として使え、すでに鉄道システムの電力有効利用(回生失効対策)などに活用した例がある。

 開発を進めている次世代フライホイール蓄電システムは、鉄道総研が考案した超電導バルク体と超電導マグネットを組み合わせた超電導磁気軸受を適用した。回転する円盤を非接触で浮上させ、軸受の摩擦損失をゼロにすることで運転効率が向上する。また、定期的に交換が必要であった軸受の寿命が半永久的になる利点がある。現在開発中の超電導磁気軸受は、1組の軸受で約4tの円盤を浮上させることを目標にしている。

 このような大きな重量を浮上させるためには、高強度な超電導マグネットに高磁場を発生させる一方、効率の良い運用のためには冷却温度を上げる必要もある。そこで今回、この超電導マグネットに使用するコイルに、古河電工が2012年に買収したスーパーパワー社の第2世代高温超電導線材を用い、中部電力が開発した「よろい」コイル構造の、内径120mm、外径260mmのダブル・パンケーキコイル(テープ状の超電導線を薄く切ったバウムクーヘンのように巻いた、2枚で1対の扁平なコイル)とした。

 このコイルを、液体窒素を使わない熱伝導による冷却で、51K(マイナス222℃)に保持して、運転電流である110Aでの通電と磁場を確認し、さらに線材の性能限界の163Aの通電に成功した。また、超電導バルク体との組み合わせ試験を実施し、2tを超える浮上力が出ていること、強度的にも問題が無いことを確認した。これまでの第1世代高温超電導線材は、高磁場を発生させるために20K(マイナス253℃)以下まで冷やさなければならなかったが、第2世代高温超電導線材では、50K(マイナス223℃)の温度で運転でき、冷却コストの低減にめどが立ったという。今後は、さらにコイルを追加して、実規模のフライホイールの浮上試験を行う方針だ。