2013年2月の展示会に出展した様子
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2013年2月の展示会にCuペーストを出展
2013年2月の展示会にCuペーストを出展
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 産業革新機構は、太陽電池や電子機器向けのCuペーストを開発するマテリアル・コンセプトの第三者割当増資を引き受け、6億円を上限に出資することを決めた。なおマテリアル・コンセプトは、大和企業投資に対しても第三者割当の実施を決定済みである。

 マテリアル・コンセプトは、2013年4月に東北大学 教授の小池淳一氏が設立した。同氏は過去に、半導体のバリアーメタルとして使うCu-Mg材料を開発し、半導体メーカーに採用された実績がある。

 小池氏がマテリアル・コンセプトで狙うのは、太陽電池の受光面側の電極として使われているAg配線を、Cu配線に置き換えることである。Ag配線の形成に用いるAgペーストは、太陽電池セルの材料コストの1/4程度を占める。これを安価なCuペーストに置き換えることで、材料コストを一気に2割削減できるという。

 Cu配線の効果は、抵コスト化だけではない。Cuペーストを用いた配線の抵抗値がAgペーストより低くなるデータも得られており、配線幅の削減技術と組み合わせることでセル変換効率も高められるとする。

 ただしCu配線を用いる場合、CuがSi中に拡散して太陽電池セルの特性が劣化する、Cuが焼成時に酸化して抵抗値が高まるといった課題があった。小池氏は、(1)SiウエハーとCu配線の間に拡散バリアー層を形成してCuの拡散を防止するとともに、(2)Cuペーストの焼成条件を見直して酸化を防ぐことに成功した(日経エレクトロニクス2013年2月18日号NEレポート「太陽電池の配線をCuに、低コストと高効率を両立」参照)。2013年度中に量産技術の開発を完了し、材料メーカーや製造装置メーカー、太陽電池メーカーなどに技術ライセンスをしながら実用化する方針を示していた。

 小池氏の他にも、世界の太陽電池関連メーカーが、Cu配線の実用化を狙っている。例えば米First Solar社は、Cu配線を用いた結晶Si型太陽電池モジュールの量産を2014年下期にも開始する計画である。同モジュールの日本での独占販売権はJX日鉱日石エネルギーがもつ(Tech-On!関連記事)。この他にベルギーの研究機関のIMECがCu配線の研究を続けており、日本ではカネカがCu配線とヘテロ接合を採用した結晶Si型太陽電池を開発している(日経エレクトロニクス2013年11月11日号解説「太陽電池に革新を、新発想の提案が続々」参照)。