図1●「低ソニックブーム設計概念実証」(D-SEND)プロジェクトの一環として2013年8月16日に実施した、超音速試験機による落下試験の失敗に関し、原因究明の調査結果を発表するJAXA航空本部事業推進部長の大貫武氏
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 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、「低ソニックブーム設計概念実証」(D-SEND)プロジェクト(後述)の一環として2013年8月16日に実施した、超音速試験機(S3CM:Silent SuperSonic Concept Model)による落下試験(後述)の失敗に関し、原因究明の調査結果を発表した(図1)。原因は2つで、(1)機体が不安定に陥りやすい安定余裕が少ない飛行制御プログラムになっていたこと、(2)飛行制御プログラムに組み込まれている機体モデルの空力特性の一部が、そうした安定余裕を上回るほど実機の値からずれていたこと、としている。

 ソニックブームとは、航空機が超音速で飛行する際に機体から発生する衝撃波に起因するものだ。衝撃波は、空気を圧縮しながら大気中を伝播し、地上では爆音を伴いながら急激な圧力上昇を引き起こす。この地上における爆音と急激な圧力上昇が、いわゆるソニックブームだ。騒音問題を引き起こすため、ソニックブームの低減が次世代超音速機の実現に向けての1つの課題となっている。

 もっとも、ソニックブームの低減は、機体の空力性能を低下させがち。例えば、機体の先端を丸めると、ソニックブームは低減できるが空気抵抗は逆に大きくなってしまう。そこで、「静粛超音速機技術の研究開発」を進めるJAXAが取り組んできたのが、低ソニックブームで低空気抵抗の機体を設計する概念の確立であり、その実証・評価である。冒頭の「低ソニックブーム設計概念実証」(D-SEND)プロジェクトは、ソニックブームを半減させるための先進的設計概念及び手法を実証・評価するプロジェクトとして位置づけられている。