太陽光発電協会は2月24日、2030年までの太陽光発電産業の在り方を示すビジョン「PV OUTLOOK 2030」の改訂版を公開した。
2012年に前回版を公開して以降、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)の施行による影響を受けて、国内市場の姿を大きく書き換えた。2030年の国内累積導入容量が約1億kW(100GW)という見通しそのものは、変えていない。
FITによる市場の変化、電力系統における制約とスマート化、電力システム改革の影響などを踏まえ、今後、蓄電池を中心にしたスマートコミュニティ技術を活用しながら普及を進めていくことを提言している。
ビジョンを発表した太陽光発電協会 幹事の本多潤一氏は、まず、国内市場の環境として「FITは、壊滅寸前とも見られた国内の関連産業にとって、強力なカンフル剤のような効果をもたらした」と強調した。
「壊滅寸前」とまで指摘するのは、2011年までの世界市場の中心だった欧州市場に対する輸出が急減する状況に陥っていたからである(図1)。
欧州では、2012年以降、経済の停滞や、予想以上に太陽光発電の導入が進んだことによる買取価格の下方修正や上限導入量の設定などによって、太陽光発電市場の成長が鈍化した。このために、日本の関連企業にとって頼みとしていた海外市場が縮小することになった。日本企業にとって、対ユーロの為替レートが円安傾向で推移したことも痛手となった。
そのタイミングで日本のFITが施行され、2012年度の国内出荷量は3.8GWと、前年比2.5倍以上に拡大した。そのほとんどが、メガソーラー(大規模太陽光発電所)などの非住宅分野であり、住宅を大きく上回るようになった。
系統と双方向で制御
こうした状況を受けて、今後、国内市場は三つの段階を踏んで進化していくという。最終的には、電力系統との双方向の連系によって、安定供給体制を支える姿を構想している(図2、図3)。
それまでに、グリッドパリティの実現と電力市場の自由化に備えた環境整備の段階、電力系統と部分的に統合した自立分散型の電源となり、電力系統への負担を減らす段階を経て進化していく。
こうした進化の中で、発電の経済性のみを最大限に追求したような現在の太陽光発電システムから、今後は系統の安定化を担うインフラとして、蓄電池の導入とともに、HEMS(住宅エネルギー管理システム)やBEMS(ビルエネルギー管理システム)といったスマートグリッドの技術を使いこなすことで、系統と双方向で制御できる発電システムに変わっていく(図4)。ビジネスモデルも変わってくる(図5、図6 )。
メガソーラーからミドルソーラーへ
2030年の国内の累計導入量は102GWとなる見通しである(図7)。年間導入量では、2015年から、出力1MW以上の発電システムと住宅用が減少傾向となる。「FITを導入した国では、FITの運用の状況によって、導入量が波打つように増減しながら、市場が成長していく宿命にある」(太陽光発電協会の本多氏)。
中でも、メガソーラーの導入が急激に減っていくとする(図8)。買取価格の下落が見込まれること、系統連系における制約が高まること、メガソーラーの建設に向く土地が減ってくることの三つが理由である。
ただし、その後、ミドルソーラー(1MW未満の中・小規模の太陽光発電所)が増え、メガソーラーの減少分をカバーするまでに成長していく。日本の関連企業にとっては、2020年以降に見込まれる、北米やアジア、アフリカなどの急激な成長を取り込んでいくことを視野に入れる必要がある(図9)。
また、100GWを超える太陽光発電システムを組み込んだ電力系統の安定化に必要な蓄電池については、電気自動車の普及や大型のビルへの設置に期待する(図10)。
図9と図10のデータを、記者会見時のデータに更新しました。現在の図は修正済みです。 [2014/02/27 12:19]