バトン渡しに失敗


 このように、PS4やXbox Oneでは、前機種のPS3やXbox 360でゲームをプレーしていたユーザーが、順調に乗り換えている。リレー競争でいえば、次の走者にうまくバトンが渡った形だ。一方、Wii Uでは失敗している。それはなぜか。大きく二つの理由がある。

 一つは、Wiiユーザー、特にそれほど頻繁にゲームを楽しまない「カジュアルゲーマー」から見て、Wii Uへの驚きが少なかったことだ。カジュアルユーザーの中には、Wii Uで新たに導入したタブレット型コントローラー「GamePad」が「Wii U独自のもの」という認識ではなく、「Wii」の周辺機器の一つと考えているユーザーもいるという。

 もう一つの理由は、Wiiの売れ行きが急速に落ち込んだことである。Wiiは2007年と2008年に特に多く売れたが、その後、年々大幅に販売台数が減っていった。2010年台に入ると、対応ソフトの種類も急速に減っていった。Wiiは実売で1億台以上売れた。1億台を超えたゲーム機としては、ゲームの種類が少なすぎると思う。

 新作ゲームが減ったのは、おそらく、Wii U本体の開発や対応ソフトの開発に任天堂がリソースを割いたためだろう。Wii対応ソフトの種類が減ったことで、カジュアルゲーマー離れを引き起こした。一度離れたユーザーはなかなか元に戻らない。ゲームを頻繁にプレーしないカジュアルゲーマーはなおさらだ。

 一方で、PS3は2010年代に入っても売れ続けている。2011年~2013年で最も売れた据置型ゲーム機はPS3だ。この勢いを引き継いだ形で、PS4も売れた。PS3については、今後SCEがどこまで値下げするかによるが、2016年には実売で累計1億台に到達すると思う。

 単にPS3がまだ売れ続けているから、ということだけがPS4が売れている理由ではない。機能面でも時代に合ったものを導入している点が、ユーザーに受け入れられている。例えば、PS4のコントローラーには、「SHARE」ボタンがある。これを押せば、ユーザーがプレーしているゲームの様子を録画して、SNSや動画共有サービスなどに公開できる。現在、ゲームをプレーしている動画をYouTubeやニコニコ動画に公開して、ゲーム体験を共有することが一種のブームになっている。ここで上手なプレーを見せたユーザーが「ヒーロー」になり、注目を集める。こうした現象が引き金になって、動画が公開されたゲームの売り上げが急速に伸びることもある。特に若いユーザーほど、プレー動画を投稿する傾向が強い。

 Wii Uにも、「Miiverse」によって、ユーザー間のゲーム体験の共有を狙っているが、使い勝手がいいとはいえない。そもそも、Wii Uは起動時間が遅い。今後、ソフトウエアアップデートによって起動時間は短くなるようだが、「Wii Uは遅い」という認識が既に広がっており、大きなディスアドバンテージになっている。