東芝は、TransferJetのスマートフォンなどへの搭載を目指して、小型の無線通信モジュールと薄型のカプラを開発した(図1)。無線通信モジュールは4.8mm×4.8mm×1.0mmと小さく、かつ薄い。同社が2012年に学会発表したモジュール比では60%小さく、国内競合他社が発表したモジュール比でも20%小さいという。「世界最小」(同社)だとする。

図1●開発した無線通信モジュール(上)と配線一体型カプラ(下) 下の写真の青いボードの中央に、無線通信モジュールが載っている。東芝のデータ。
図1●開発した無線通信モジュール(上)と配線一体型カプラ(下)
下の写真の青いボードの中央に、無線通信モジュールが載っている。東芝のデータ。
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図2●従来のカプラと今回のカプラ 東芝のデータ。
図2●従来のカプラと今回のカプラ
東芝のデータ。
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図3●送信信号の測定結果 左下の緑色の波形が送信スペクトル。東芝のデータ。
図3●送信信号の測定結果
左下の緑色の波形が送信スペクトル。東芝のデータ。
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 カプラはフレキシブル基板で実現し、厚さを0.12mmに抑えた。カプラと通信モジュールの間の配線も同じフレキシブル基板に一体化して作る。一方、従来は0.5mm厚のリジット基板のカプラに、配線部分の厚さ0.8mmの同軸ケーブルが載っていたので、最厚部は1.3mmとなる。最厚部の寸法は1/10以下になった(図2)。

 このように物理的に小さく薄くしながら、かつ高速で無線通信できるようにした。「TransferJetには、522Mビット/秒(bps)、261Mbps、130Mbps、65Mbps、32Mbpsの五つの通信速度モードがあるが、これまでは522Mbpsの製品はなかった。今回我々が開発した無線通信モジュールが初めて522Mbpsを実現した」(東芝の阿川謙一氏:セミコンダクター&ストレージ社 半導体研究開発センター 先端ワイヤレス・アナログ技術開発部 主務)。

 今回の取材で、阿川氏は、開発した無線通信モジュールとカプラの組み合わせで送信した信号の測定結果を見せた。送信スペクトルはキャリア周波数の4.48GHzを中心にした3dB帯域が±280MHzで、560MHzの通信帯域を確保していることを示していた(図3)。また、開発した無線通信モジュールとカプラを組み合わせたデモンストレーションでは、260Mバイトの動画像データを6秒で送っていた。これは、市販されているTransferJetモジュールの約1/4の時間だという。