セルの裏面でインターコネクトのハンダ不良で断線を起こしている中古パネルの例(出所:ネクストエナジー・アンド・リソース)
セルの裏面でインターコネクトのハンダ不良で断線を起こしている中古パネルの例(出所:ネクストエナジー・アンド・リソース)
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現時点で国内最大の規模となる、約70MWの「鹿児島七ツ島メガソーラー発電所」(出所:京セラ)
現時点で国内最大の規模となる、約70MWの「鹿児島七ツ島メガソーラー発電所」(出所:京セラ)
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 再生可能エネルギーによる電力の固定買取価格制度(FIT)が日本で施行されてから約1年間以上がたち、出力1MW以上のメガソーラー(大規模太陽光発電所)の建設ラッシュが続いている。電力事業には縁が薄かった企業の参入が相次ぐなど、日本の電力市場を変える可能性を開く一方、建設した発電所を長期間、安定的に運用していくために課題となっていたのが、関連技術やリスク、その対処法などの知識の啓蒙である。

 このような中、新規参入組が多い発電事業者をはじめとする関連市場や産業、企業が持続的に成長するために必要な情報の発信を目的に、日経BPクリーンテック研究所を中心に運営するweb媒体「メガソーラービジネス」を10月に開設してから約3カ月間に掲載したコラムのうち、アクセス数が多かった内容から、2013年の現状や今後の課題を展望する。

 2013年10月1日~12月23日の間に、「メガソーラービジネス」において、最も多くの読者から読まれたのが、再生可能エネルギーを推進する立場にあり、同制度を所管する経済産業省 資源エネルギー庁 新エネルギー対策課の村上敬亮課長に、現状の分析や今後の課題などを聞いたインタビュー「「準備が遅いメガソーラーは一掃すべき」、経産省・村上氏(上)」(第1位)、「「規制でなく、技術で課題解決を」、経産省・村上氏(下)」(第2位)である。

 「未だに土地の確保や建設、発電設備を発注していない、1kWあたり42円(税込み)の固定買取価格で設備認定を受けた発電所が一掃されるのは、関連業界の健全な発展のためである」と、村上氏がコスト低下に向けた最大の阻害要因と分析する「42円組の居残り」を解消し、さらなる業界の活性化につなげていきたいとした。

 また、メガソーラーの施工や保守に詳しい専門家による、具体的なトラブルの事例やその解決策を紹介するコラムが上位を占めた。日本PVプランナー協会(横浜環境デザイン社長)の池田真樹理事の解説による、「メガソーラーに「停止」はつきもの、1カ月間以上、売電していなかった例も」(第3位)、「稼働後まもなくパネル40枚に出力異常、直流回路ごとの監視で発見」(第5位)、ネクストエナジー・アンド・リソースの解説による、「中古パネル事業から見えてきた太陽電池の不具合事例」(第4位)、「除草に1回50万円以上も、適正な保守費用を模索」(第6位)、「遠隔監視しても、半年間、パワコン停止に気付かないケースも」(第7位)などである。

 FITによって太陽光発電所は投資対象にもなり、発電事業者の「1日たりとも停めないで欲しい」という要求が強まっている。そんな中で、外見から異常に気付きにくい太陽光発電の課題が浮き彫りになってきた。

 しかも、メガソーラーは郊外でほぼ無人で稼働する。そこで、稼働中にどのような不具合が起こり、それにどう対処すべきなのか、試行錯誤しつつ模索している段階である。第2位となったコラムでは、パワーコンディショナー(PCS)が止まっているのを45日間も気付かず、この間まったく売電できなかったというメガソーラーの例などから、太陽光発電所が予想以上に頻繁に止まることを紹介した。

 さらに、メガソーラー関連では、毎週1回、日本各地で稼働しているメガソーラーを訪れて取材する「メガソーラー探訪」へのアクセス数も多かった。「川崎・浮島、臨海工業地帯で飛行機が飛び交う発電所」(第8位)、「山口・防府発、田畑を使った売電で農業を活性化」(第9位)、「埼玉・桶川、池に浮かび、渡り鳥が羽を休めるメガソーラー」(第10位)、などである。掲載時には国内最大規模だった「大分で国内最大級のメガソーラーが稼働」が第10位、現時点で国内では圧倒的な規模となる「鹿児島・七ツ島、桜島を前に29万枚のパネルが並ぶ、国内最大のメガソーラー」も第11位と続いた。

 それぞれのメガソーラーには、それぞれの背景、それぞれの思いがある。発電事業者は関連事業者や行政、電力会社などの力を借りながら、障害を乗り越え、必要な技術を組み合わせてメガソーラーを実現していく過程が浮き彫りになっている。紹介してきたメガソーラーの発電事業者は、エンジニアリング企業、農家、不動産会社、行政、携帯電話事業者、リース会社、ガラス会社など、企業の規模も大企業からベンチャー企業までと幅広く、こうした事例を参考に、より多くの事業者が参入し、より活発な市場となることを期待したい。