東芝がドイツで展開する太陽光発電電力の小売事業のイメージ(出所:東芝)
東芝がドイツで展開する太陽光発電電力の小売事業のイメージ(出所:東芝)
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 東芝は12月4日、ドイツで太陽光発電による電力の小売り事業に参入すると発表した。ドイツ最大手の不動産会社であるガグファ社と提携し、同社が所有する賃貸アパートで太陽光発電システムを活用した電力小売事業を展開する。2014年3月からフィーリンゲン・シュウェニンゲン市とオストフィルダン市で開始する。

 具体的には、年金基金などから投資を募りガグファ社が保有するアパートに東芝製の太陽光発電システムを設置。太陽光発電システムで発電した電力は、小売事業者である東芝インターナショナル・ヨーロッパ社ドイツ支店(以下、TIL)が購入し、配電事業者の売電価格より安い料金でアパートの居住者に売電する。夜間など太陽光発電システムが稼動しない時間帯は、TILが卸電力市場から電力を直接調達し、太陽光発電システムの売電価格と同等の料金で居住者に売電する。

 電力を消費する居住空間に近いアパートの屋上に太陽光発電システムを設置し、発電した電力を居住者が直接消費することで、固定価格買取制度(FIT)を前提にせず、TIL、ガグファ社、投資者、居住者のそれぞれにメリットがあるビジネスモデルを構築したという。開始時点の総発電容量は3MWで、750世帯に売電する予定。2016年までにドイツ全域で総発電容量100MWまで規模を拡大する計画だ。

 ドイツでは、2000年に太陽光発電のFITが導入され、買取価格が年々低下している一方で、太陽光発電の増加に伴い電気料金は高騰している。また、電力取引の自由化が進んでおり、小売事業者は卸電力市場から直接電力を調達できる。今回のモデルは、小売事業者であるTILが、電力系統を介さずアパートの居住者に直接売電することで、地域の電力系統への負荷を低減するとともに、居住者に環境負荷の少ないエネルギーを提供できる。

 今後、東芝は、スマートメーターや蓄電池、その制御技術などを組み合わせ太陽光発電システムで発電した電力を昼夜問わず活用できるモデルを構築するとともに、リアルタイムで地域のエネルギーマネージメントができるサービス事業への展開を検討する。各国の電力事情に適した分散電源を活用したスマートグリッド事業を世界で展開する方針という。

 ドイツでは、再生可能エネルギー由来電力の買取価格が下がる中、FIT後を睨んだビジネスモデルを探る動きが活発化している。太陽光発電電力の自家消費型モデルもその1つ。東芝は、FITで先行した欧州市場で、次世代型の再エネビジネスに布石を打った形だ。