図1 IDMC '13の基調講演でFPD開発の歴史を語るAUO社のFan Luo氏
図1 IDMC '13の基調講演でFPD開発の歴史を語るAUO社のFan Luo氏
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 少し前になるが、ディスプレイの国際会議「IDMC '13(International Display Manufacturing Conference)」が、台湾・台北市で2013年8月27~30日に開催された。ディスプレイ最大の学会「SID(Society for Information Display)」の台北支部と台湾のディスプレイ関連の業界団体「TDUA(Taiwan Display Union Association)」 などが主催した国際会議で、ディスプレイやタッチ・パネルの製造技術を中心に発表が行われた。

 同時開催された展示会「Touch Taiwan 2013」およびシンポジウム「FPD International Taiwan 2013」(Tech-On!関連記事との相乗効果もあり、活況であった。8月28日のオープニング・セレモニーの後に行われた2件の基調講演をレポートすると同時に、アジアに拡大したフラットパネル・ディスプレイ(FPD)産業の流れを筆者なりに俯瞰し、FPDを含む日本の電子産業復活に必要な技術者のマインドについて提言したい。

40年前に発明されたTFT回路が、今もディスプレイ駆動の基本となっている

 最初の基調講演に立った台湾AU Optronics(AUO)社のFan Luo氏は、約40年間携わってきたディスプレイ開発のトッピクスを紹介しながら、アモルファスSi(a-Si)TFT液晶パネル技術が中核となってFPD産業を牽引していった経緯や、有機ELをはじめとする新技術の台頭への期待を語った。Fan Luo氏は、1973年に米Westinghouse社に入社し、米Xerox社や米General Electric(GE)社などでディスプレイ開発に携わった後、1996年に台湾に戻り、台湾FPD産業の立ち上げに貢献してきた。このような活動が認められ、今回の基調講演に招かれた。

 TFT(薄膜トランジスタ)の概念が最初に米国で特許出願されたのは1933年であったが、当時は製造できる薄膜技術もなく、実際に“物”は作れなかった。米RCA社が1962年にCdSでTFTセンサを発表し、1971年にはTFT液晶の駆動回路である1T1C(一つのトランジスタと一つのキャパシタ)を発表。そして、1974年にWestinghouse社が最初のTFT液晶パネルを披露した。電圧駆動である液晶ディスプレイ用として、この1T1CのTFT回路は現在もそのまま使われている。