2012年から3町村で実証

 ヘルスプロモーションカーは、小型の医療機器などを搭載した多機能小型車。訪問診療や健康診断支援、医師派遣などに使う。医療資源に恵まれない地域(へき地医療)の課題解決に向けて、青森県とGEヘルスケア・ジャパンが2012年から青森県の東通村・南部町・深浦町の3町村において実証実験を進めてきたものである。

 青森県としては、ヘルスプロモーションカーを走らせることによって、患者の通院負担の軽減を図るなど、各自治体が抱える課題の解決を模索する狙いだ。「ヘルスプロモーションカーによって、検診率のアップにつなげたい」(三村氏)。

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GEヘルスケア・ジャパンの川上氏

 一方、GEヘルスケア・ジャパンでは、東日本大震災の復興支援策の一環として、日本GEが軽自動車のドクターカー「めんこい」を被災県に寄贈し、被災地の医療の強化につなげる取り組みを進めていた。その中で、このドクターカーのような小型車が、青森県が進めようとしていたへき地医療の課題解決にも活用できると考え、同県と共同で実証を進めることになった。

 GEヘルスケア・ジャパンは、日本のニーズに対応した製品を開発し、それを世界に展開していく「IJFG」(in Japan for Global)と呼ぶ戦略を強化している。この青森県との取り組みも、まさに今後は世界に展開できるテーマであると見る。「ヘルスプロモーションカーは、IJFGの一つの柱になる取り組みだと期待している」(同社の川上氏)。

検査入院の回避も可能に

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ヘルスプロモーションカー実証成果報告会でのパネル討論の様子

 前述のヘルスプロモーションカー実証成果報告会では、実証を進めてきた青森県の三つの自治体の医療関係者から、評価結果の考察が披露された。その概要は次の通りである。

・東通村:ヘルスプロモーションカーによって提供されるサービスに対して、通院の負担が減る、受診の機会が増えるなど、住民が大きな期待感を持って受け止めていることが明らかになった。また、住民の健康に対する意識や行動の変化の度合いが強まることが確認された。

・南部町:訪問診療、訪問看護にヘルスプロモーションカーを活用することにより、患者の通院負担が軽減されるとともに、入院の可否を判断するための検査入院を回避することも可能であることが証明された。

・深浦町:医療費分析の結果、入院医療費が非常に高いことが明らかになったが、この要因が「医療機関への通院アクセスの困難さ」であったとしたら、ヘルスプロモーションカーの導入によって一定程度解消され、入院医療費の削減につながる可能性もある。

 同報告会で特別講演を行った青森県立中央病院の吉田氏は、これらの自治体の結果を踏まえてヘルスプロモーションカーへの期待を語ると同時に、次のように指摘した。「ヘルスプロモーションカーに過度な期待をかけて、医療のすべてを押し付けるのは誤りだ。今後、地域医療の中でどのように位置付けていくかが大事になる」。

 世界に胸を張って発信できる医療の“青森モデル”の構築に向けて、今後、県の舵取りに注目が集まっている。