2013年9月30日、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と川崎重工業は、「川重が開発した臨床用の細胞自動培養システム『R-CPX』をタイのチュラロンコン大学医学部内に設置し、同年10月から実証実験を始める」と発表した(図)。再生・細胞医療分野での先行的な布石として、臨床用の細胞自動培養システムを稼働させ、その実績をつくる戦略である。最終的には、実証実験の実績を踏まえて、タイの医療機関などが再生・細胞医療の薬事承認を取得することを目指す。

臨床用の細胞自動培養システム「R-CPX」の外観
図●臨床用の細胞自動培養システム「R-CPX」の外観

 R-CPXは、中央に配した2台の6軸垂直多関節型ロボットがレール上を動く仕組みで、両ロボットが細胞培養の容器を培養室から取り出し、古くなった培地(培養液)を交換するなどの作業を行う。培養容器のキャップを開けるなどの作業では2台のロボットが協調して動作する。

 両ロボットは“クリーン”仕様のもの。川重によれば、「システム内を除染する過酸化水素蒸気(H2O2)によって腐食しないように、アームカバーやシールに高耐食性の材料を採用するなどの工夫を凝らしてある」(システム技術開発センターMDプロジェクト室)。また、培養された細胞の品質をCCDカメラなどで確認する機能や、故障時に川重の担当者が遠隔で操作・確認する機能が盛り込まれている。表にR-CPXの基本仕様を示す。

表●R-CPXの基本仕様
対象細胞接着系細胞
培養能力最大10インキュベータ(1インキュベータ当たりフラスコ6個)
取り扱い容器T175フラスコ、T500フラスコ、ハイパーフラスコ
装置寸法幅6.4×奥行き1.65×高さ2.4m
設置環境クリーン度10万(装置内部はクリーン度100)
除染機能過酸化水素蒸気による自動除染