PS4を持つ伊藤雅康氏
PS4を持つ伊藤雅康氏
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ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)は2013年9月に開催されたゲーム業界の世界最大級の展示会「東京ゲームショウ 2013」で、「PlayStation(PS) 4」の事業戦略やPS4の機能などについて語った。こうした発表内容について、同社 SVP兼 第1事業部事業部長の伊藤雅康氏に話を聞いた。(聞き手:根津禎=日経エレクトロニクス)

――据置型ゲーム機市場には逆風が吹いている。そんな中、あえてハイエンドの据置型ゲーム機の新機種を出す意義を教えてほしい。

伊藤氏:最大の違いは、没入感のあるゲームを提供できることだ。スマートフォンなどのゲームに比べてコントローラを使う方が没入感は高まる。立体映像のゲームも据置型ならではだと考えている。確かに、テレビの前でじっと座ってゲームを楽しむ時間を取りにくくなっている。そこで、スマートフォンとの連携や携帯型ゲーム機「PS Vita」との連携を実現できるようにしている。

――PS4の目標販売台数を2014年3月までに500万台とした。この数字はPS3に比べて多いのか?
伊藤氏:PS3の場合、同じような期間(発売から約4カ月)で、355万台を目標にしていた。PS4はそれよりも150万台多いことになる。欧米での予約は好調で、既に100万台を受注した。欧米の据置型ゲーム機市場は、PS2の時代にはSCEが大きなシェアを持っていたが、現在は競合他社にそのシェアを奪われている。そこで、PS4でそのシェアを取り戻したい。その自信は当然ある。

――PS4の予約が好調な理由は?
伊藤氏:二つあると考えている。一つは、PS3の発売時に比べて価格が安いこと。北米では399米ドルと、PS4が搭載する多彩な機能に対して割安感があるのだろう。

 もう一つの理由は、PS4の発売時から多くのゲーム・タイトルが揃うことである。PS4と同時に発売されるタイトル数は33と、PS3の約6倍に相当する。タイトル数が多いほど、多くのユーザーに訴求できる。

――PS4の日本での発売は2014年2月と、欧米の発売時期である2013年11月に比べて約4カ月遅い。日米欧で同時に立ち上げるとPS3発売のときのように数量が不足する恐れがあることが原因か?
伊藤氏:これまでも説明してきたが、数量はボトルネックではなく、あくまで日本市場に向けたゲームが揃うのが2014年2月になることがその理由だ。PS3は発売当初、当時からしてみると最先端の技術を多数盛り込んだ。その結果、立ち上げ時にPS3本体が不足する事態になった。PS4のハードウエアは先端技術を利用しているとはいえ、PS3を発売したときほどの最先端技術を利用しているわけではないので、数量を揃えるのはそれほど大きな問題ではない。

――PS4にHDMIを通じてゲーム・プレー映像を録画できる機能を入れたのはなぜなのか。
伊藤氏:PS3のときから、ゲーム愛好者の中で、自分のプレー映像を、アナログ端子を通じて外付けのHDDに書き出して、それをパソコンで編集してインターネットにアップロードするユーザーがいた。しかし、PS4では映像のアナログ出力端子がない。そこで、HDMIで実行できるようにした。

――4K映像に対応するのは映像だけで、ゲームは対応しないと聞いている。
伊藤氏:そうだ。ただ、技術的なポテンシャルとして、ゲームで4K映像を扱うことはできる。据置型ゲーム機としてPS Vita TVという選択肢もあるが、4K映像のゲームなど、処理負荷が大きなゲームにはPS4のようなハードウエアを搭載したゲーム機が向くと考えている。

――PS4の開発において、ソニーと協力した部分はあるのか。
伊藤氏:ある。ハードウエアに関しては、例えば、Blu-ray Disc装置の開発に関して、ソニーのデバイス・チームに協力を仰いだ。

 PS4の場合は、ハードウエアよりもソフトウエアの面で、多岐に渡って協力してもらった。例えば、顔認識技術や音声認識技術などである。ネットワーク技術に関しても、一緒に取り組んだ。