「今日のリハーサルでは、発射の日を模擬して全ての手順を確認する作業をひと通り終えた。打ち上げに向けてほぼ準備万端である」。宇宙航空研究開発機構(JAXA)のイプシロンロケットチーム プロジェクトマネージャの森田泰弘氏は、2013年8月20日に実施した「イプシロンロケット」の試験機打ち上げリハーサルの終了後の記者会見で、開口一番にこう語った(図1)。

射座に据え付けられたイプシロンロケットのイメージ
図1●射座に据え付けられたイプシロンロケットのイメージ
提供:JAXA

 イプシロンロケットは、手軽かつ頻繁に打ち上げることが可能なようにと、JAXAが研究開発を進めてきた小型の固体燃料ロケットだ。ロケット(機体)に人工知能を持たせ、機体点検を自動・自律的に行えるシステムを、ロケットとしては世界で初めて搭載する。さらに、出来上がりに近い形で発射場に持っていけるように部品の一体化を図っている。これらの取り組みをベースに、イプシロンロケットでは、第1段ロケットを発射台に立ててから打ち上げ翌日の後処置作業までに要する期間をたった7日間に短縮できるという。

 通常、ロケットの打ち上げでは、発射台の上にロケットを組み上げた後で、電気系の点検を実施する。2006年に退役したJAXAの固体燃料ロケット「M-Ⅴ」をはじめとする従来のロケットでは、この作業に多くの時間を要していた。M-Ⅴの場合は42日間を要していた。イプシロンロケットでは、自動・自律的点検システムである即応型運用支援装置「ROSE」を機体に搭載することで、ROSEと発射管制設備を連携させて点検作業を実施することが可能になっている。これにより点検時間を短縮できる他、従来必要だった点検用のケーブルの取り付けや取り外しなどの作業を省略・軽減できる。前述の部品の一体化などの効果もあり、上記期間の大幅な短縮が可能になっている。