ソニーは、FeliCaを用いた電子お薬手帳の試験サービスを2013年秋に神奈川県川崎市で開始する。同社が新たに開発した、個人情報とデータを分離してデータのみをクラウドに蓄積する技術を活用する。仮にクラウド上のデータへの不正アクセスがあったとしても、個人情報が守られる構造を実現した。

 お薬手帳は、医師が処方した薬の名称や量、服用回数、飲み方などの調剤情報を記録するもの。現在は主に紙の手帳が利用されている。これに対して今回の電子お薬手帳は、FeliCaチップが埋め込まれたカードと、スマートフォン用の専用アプリケーション(以下、アプリ)で構成する。

 利用者は、カードを薬局の端末にかざすだけで、調剤履歴の閲覧と調剤情報の記録を行うことができる。スマートフォンに専用アプリをインストールすれば、情報閲覧の他、診察を受けた際の症状や服薬後の副作用、アレルギーなどの記録も可能である。

ソニー
今回のシステムのイメージ(リリースから)

 薬局では、専用のソフトウェアをインストールしたパソコン/タブレット端末、カードリーダーなどを用意することでシステムを構築できる。

 ソニーが新たに開発したシステムは、データのみがクラウド上のサーバーに保存される一方で、個人情報は利用者が所持するカード内に記録される。その上で、これらの情報を結びつけるための共通のIDを割り当てる。

ソニー
新たに開発した情報蓄積システム(リリースから)

 今回のシステムでは、調剤履歴に加えて利用者がスマートフォンで入力した症状や副作用、アレルギーなどに関する情報も薬局側で一元的に把握することができるようになる。薬剤師は利用者の状況をより効率的かつ的確に把握できるようになり、「リスクコミュニケーション」の促進にもつながるという。

ソニー
利用者に価値を還元する統計データの還元例(リリースから)

 ソニーは、神奈川県の川崎市宮前区医師会および同市薬剤師会と協力して、五十嵐中特任助教(東京大学大学院薬学系研究科)監修の下、2011年11月から川崎市宮前区の約20の薬局にシステムを提供してきた。既に、各薬局が同システムを用いたサービスを提供し、現在までに約1000人の利用者が実際に利用しているという。

 この実証実験を通して得た要望や知見を生かし、今回、対象エリアを川崎市全域に拡大することになった。ソニーは、今回新たに開発した個人情報に配慮したクラウドへの情報蓄積技術を、電子お薬手帳以外のさまざまなサービスに展開していく考え。