経営方針説明会の様子
経営方針説明会の様子
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 東芝は2013年8月7日に東京都内で「2013年度 経営方針説明会」を開催、同年6月末に代表執行役社長に就任した田中久雄氏が登壇した(関連記事)。冒頭、自らの責務を「成長に向けた施策を着実に実行していくこと」とした上で「市場の伸びに過度に依存せず、自ら成長エンジンを作りだしていく“創造的成長”を目指す」とした。同社はここ数年、全社売上高の減少傾向が続いており、「今年度を起点に成長への回復を図る」と述べた。

 今回示した経営方針の眼目は大きく二つ。第1は、エネルギーとストレージに続いて「ヘルスケアを第3の柱に据える」(田中氏)方針を打ち出したこと。第2は「縦割りの組織を打ち破り、事業間のコミュニケーションを活発化する」(同氏)ことなどを狙い、2013年10月1日付で事業グループを大幅に再編することである。

クラウドを活用した「予防・予後ビジネス」に注力

 ヘルスケア事業を第3の柱に据える理由については「医療費の増大が先進国と新興国のいずれでも大きな課題となっていることに加え、今後は画像診断に限定されない新しい診断・治療技術が確立される見通しで、ここに大きな商機がある」(田中氏)ことを挙げた。同社はこれまでもヘルスケア(医療)分野で、X線CT装置(世界シェア3位)や超音波診断装置(同3位)、MRI装置(同4位)などの画像診断装置事業を手掛けてきた実績がある。

 今後は、こうした既存事業の拡大を目指すとともに、体外診断薬・機器を生かした低(非)侵襲治療や、クラウド上に蓄積した個々人の健康データを生かす「予防・予後ビジネスを展開していく」(田中氏)。予防・予後ビジネスについては、既に東北大学との共同研究に着手するなど、さまざまな取り組みを始めているという。このように、今後は画像診断装置などを単体で販売するだけでなく、ITを活用したサービス事業につなげたい考えだ。ヘルスケア分野では「M&Aも効果的に活用する」(同氏)。

五つの社内カンパニーに再編

 事業グループの再編については、現行の「社会インフラ事業」「デジタルプロダクツ事業」「電子デバイス事業」「家庭電器事業」という四つの事業セグメントを、「電力・社会インフラ事業」「コミュニティ・ソリューション事業」「ヘルスケア事業」「電子デバイス事業」「コンシューマ&ライフスタイル事業」という五つの事業部門に再編し、社内カンパニー制を導入する。さらにこれら5部門を横断する形で、クラウド&ソリューション事業を展開する。

 今回の説明会ではこの他、「ニュー・コンセプト・イノベーション」と呼ぶ、グループ全体の技術を横断的に融合した製品・ソリューションに注力する考えを示した。具体的には「紫外線照射装置×ろ過フィルタ×2次電池」による小型浄水装置や、「DNAチップ×高精度GPS×食品トレーサビリティ」による食品トレーサビリティ・システム、「3D映像技術×高精度GPS×3D超音波探傷技術」によるインフラ・ヘルス・モニタリングなどを挙げた。2013年度中の製品化を予定しているものには、「裸眼3Dテレビ×X線CT装置」による裸眼3D表示可能なCT装置、「画像認識技術×POSレジ用スキャナ」による(形状から物体を特定できる)オブジェクト認識スキャナがあるという。

法人向けへの注力度高める、テレビ事業は継続

 2015年度の業績見通しについては、売上高7兆円、営業利益4000億円を見込んでおり、2013~2015年度の売上高の年平均成長率は7.1%を計画する。2015年度に計画する売上高の内訳は、売上高の大きい順に「ストレージ・デバイス(1.4兆円)」「コンシューマ&ライフスタイル(1.3兆円)」「ビル・ソリューション(1.1兆円)」「送変電・配電/スマートグリッド(7000億円)」「原子力(6300億円)」「ヘルスケア(6000億円)」「クラウド&ソリューション(4000億円)」「火力(3500億円)」「リテール・ソリューション(3000億円)」「クリーンエネルギー(2000億円)」。

 2012年度には海外売上高比率が55%、法人向け売上高(BtoB)比率が80%だったが、2015年度には前者を65%、後者を90%にまでそれぞれ高める計画。BtoB事業への注力に伴い、これまで民生向け(BtoC)を中心に進めてきたテレビやパソコンなどのデジタルプロダクツ事業については、「聖域を設けず大胆な構造改革を進めていく。近い時期にその具体的な内容をお伝えできる」(田中氏)とした。ただし、テレビなどの家電事業は「ブランド・イメージに果たす役割が大きいことから、状況が厳しいからといってすぐに撤退するということは考えていない」(同氏)とした。