なぜ、中国・台湾で植物工場への期待が高いのか

 台湾は台風が多く上陸することでも知られるが、そうした時期には葉物野菜の価格が高騰し、乱高下が激しい。そのため、最近では農業用LED照明を用いた家庭用の栽培キットが徐々に浸透し始めているという。中国でも、寒冷地で冬場の野菜の栽培が難しい東北部で植物工場用のLED照明の販売が広がっている。

台湾植物工場展では、台湾の植物工場関連の企業がブースを並べた。左から、植物工場を運営する野菜工房農業科技(Vegetablesplant社)、植物工場の設計や設置を手掛ける台湾三愛農業科技(3i Agriculture Technology社)、植物工場関連の設備や測定装置を手掛ける慶聲科技のブース。(写真:グラナージュ)
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 ここに目を付けたのがLED照明業界だ。ここ数年、LED照明の価格は急激に下落しており、特徴を持った製品の開発で販売単価を上げたいというのが同業界の期待だ。これが農業分野の市場開拓に力を入れる機運につながっている。

 これらの課題に加え、異業種から農業分野向けの製品に参入する動きが活発化していることが、LED照明業界の追い風になりつつある。特に、太陽電池やディスプレイ関連の企業が農業分野に期待を寄せ、積極的な動きを見せている。例えば、台湾の液晶パネル・メーカーであるCPT社は代表例だ。同社の農業分野への期待度は極めて高く、植物成長用の光源や、植物工場向けの育成装置、肥料まで手を広げている。

左は、CPT社のブース。右は、同社の育成装置。(写真:グラナージュ)
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 台湾では、植物工場を中心とする農業分野への期待が大きい。2011年には植物工場関連の業界団体「台湾植物工場産業発展協会」を設立しており、現在40社以上の企業が加盟している。同団体のトップは、台湾の工業技術研究院(ITRI)の劉佳明氏である。会員の中でも、台湾の産業用エレクトロニクス機器メーカーのDELTA社は積極的にこの分野をリードしている企業の1社だ。最近は、大学の農学部出身者を積極的に採用しているという。

富士通九州システムズによる農業向けクラウド・サービスの紹介にも多くの参加者が訪れた。(写真:グラナージュ)
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 今回の展示会では、日本からも農業分野向けに情報システムなどを売り込む企業があった。富士通九州システムズだ。同社は、富士通が開発した農業向けのクラウド・サービス「Akisai」を用いて施設園芸の支援などを手掛けている。農業分野向けのLED照明が盛り上がりを見せる台湾で、施設園芸向けのSaaS(software as a service)や、センサ情報の収集や機器制御を担うシステム「施設環境制御Box」などを軸に商機を探っている。

 中国、台湾の展示会から見えてきたのは、次世代照明となる有機EL照明の市場が動き出してきたこと、そして、新しいセグメントの応用分野を開拓する動きが活発になっていることだ。特に中国市場は、これからが本当の勝負。日本メーカーのチャンスはまだ多い。