欧州メーカーも有機EL照明で地歩固め

 FOL社が注目を集める理由は、中国で生まれた有機EL照明専業メーカーである点だ。これまで、中国で本格的に有機EL照明の開発が始まるのは、製造装置の立ち上げを含めて、まだ先のこととの見方が一般的だった。この考えを同社は払拭した形だ。

FOLのブース。パネル自体の撮影については日本メーカーや韓国メーカーに露出したくないということで撮影の許可は下りなかった。(写真:グラナージュ)
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 既に、中国市場で有機EL照明を販売している、英国と中国の合弁企業である中国の鋭高(TRIDONIC社)や、オランダPhilips Electronics社も展示会で同照明をアピールしていた。特に、Philips社は上海で有機EL照明を用いたショーケースを実施するなど、中国で販売の足元を固めつつある。

 今のところ、日本の有機EL照明関連企業は、中国市場の開拓に積極的ではない。「中国には、まだ有機EL照明の市場がない」と判断している企業がほとんどというのが実態だ。だが、日本企業が中国での販売に躊躇している間に、中国企業やPhilips社などが市場確保に先鞭をつけるという「いつか来た道」の構図が見えてきたと言えるかもしれない。

左の写真は、TRIDONIC社の有機EL照明。右の写真は、Philips社のブース。手前の2カ所と、別エリアにそれぞれ有機EL照明付きの鏡を展示した。関心を示す参加者が多った。(写真:グラナージュ)
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 今回、各社のブースで有機EL照明の反響について聞いてみた。FOL社の有機EL照明の展示はメインのブースとは離れた2階の奥に位置しており、それを目当てにした人でなければ訪れないようなところに製品が鎮座していた。ただし、それでも有機EL照明を目当てに訪れる参加者が絶えなかった。

 BOE社では、筆者が訪れる前の「30分間だけで20枚以上の名刺を交換した」と担当者が語っていた。訪問者の多くは、韓国や欧米からの参加者だったようだ。

 次世代の照明である有機EL照明は、中国での関心が高まっている。だが、展示を見に訪れる日本からの参加者はそれほど多くなかったようだ。BOE社の担当者も「日本人の訪問者がいたかどうかは分からない」という印象を話していた。

 もちろん、中国での有機EL照明の販売に大きな壁があることは間違いない。この認識は、すべての企業で一致している。少なくとも2~3年の我慢が必要だろうという言葉も聞こえてくる。既に普及期に入りつつあるLED照明についてですら、中国の関連団体は「どのようにしたら日本のように家庭内へLED照明を普及させることができるのか?」という問題意識を持っている。有機EL照明に移行するまでには相当の時間が必要というのが本音だ。