小さなウエハーと小さな製造装置で、少量のICを低コストで作ることを狙うミニマルファブ(Tech-On!関連記事1、同2)。現在、0.5インチ(約12.5mm)のSiウエハーを幅30cmの製造装置群で処理できるようにと、各所で開発が進んでいる(同3)。
そのミニマルファブをテーマにした初めてのシンポジウム「ミニマルファブ・シンポジウム 2013」(主催はミニマルファブ技術研究組合)が2013年7月3日午後に東京・品川で開催された。基調講演2件のあとで、ミニマルファブの顔とも言える原史朗氏(ミニマルファブ技術研究組合 開発プロジェクトリーダ、産総研コンソーシアム・ファブシステム研究会 代表)らが、ミニマルファブの概要などを紹介した(ミニマルファブ技術研究組合の関連ページ)。
シンポジウムの最後のメニューは、パネル討論会だった。この記事では、討論会の概要を報告する。司会の原氏に加えて、5名のパネラが登壇した。井上道弘氏(産総研 九州センター顧問)、和田木哲哉氏(野村證券、エクイティ・リサーチ部 エレクトロニクス・チーム マネージング・ディレクター)、今井正治氏(大阪大学 大学院情報科学研究科 情報システム工学専攻 教授)、池田修二氏(ティーイーアイソリューションズ 代表取締役)、中馬宏之氏(一橋大学 イノベーション研究センター 教授)である。
後工程の準備も進めている
討論会は原氏のプレゼンテーションで始まった。「ミニマルファブと7割がた同じ発想だ」として同氏が紹介したのが、Chris Anderson氏の著書『MAKERS』である(図1)。3次元スキャナと3次元プリンタがあれば、金型なしで誰でもモノが作れる。1万個以下の製品を作るには最適な手法である。その製品の中身や頭脳に当たる半導体を作るのがミニマルファブだとし、「3次元プリンタとミニマルファブとを組み合わせれば、真の注文生産を実現できる」と述べた。
ミニマルファブに関しては、これまで基本的に前工程(拡散工程)が紹介されてきた。「実は後工程もやっている」として、井上氏がスライド見せた(図2)。複数のダイを縦積みする3次元実装が可能な後工程ラインの構築に向けて、装置の開発が進められているとのことだった。さらに同氏は、設計サイドとの連携を図るために、ふくおかアイスト(福岡県産業・科学技術振興財団)と協調していることも紹介した。なお井上氏によれば、ミニマルファブに向いたアプリケーションは、医療機器、産業機器、エネルギー関連などの少量多品種の製品だという。