家電・モバイル ボリュームゾーンの最新動向を知る
 

29週連続首位の小型複合機は、いかにして生まれたのか

根津 禎=日経エレクトロニクス
2013/06/28 15:41
印刷用ページ

 発売から9カ月を経た現在でも、国内の複合機・プリンター市場で首位争いを続けている製品がある。それが、セイコーエプソンが2012年9月に発売したインクジェット複合機「EP-805A」だ(図1)。調査会社であるジーエフケー マーケティングサービス ジャパンの「家電量販店におけるプリンタの週次モデル別販売数量ランキング」(週間の集計)によれば、2012年11月12~18日の週で首位になった後、2013年6月3~9日の週まで、29週連続で首位を保っている。

図1 インクジェット複合機「EP-805A」(写真:セイコーエプソン)
図1 インクジェット複合機「EP-805A」(写真:セイコーエプソン)

 EP-805Aのヒットにつながった最大の要因は、その小ささにある。前機種の「EP-804A」に比べて設置面積を約38%、体積を約40%も削減した(図2)。

図2 大きさの比較(図はセイコーエプソン)
図2 大きさの比較(図はセイコーエプソン)

 開発チームは前機種の発売の際も、小さいと自信を持って送り出した。だが、一部の消費者からは「まだ大きい」との声があった。そこで、「ユーザーは複合機をどこに置きたいのか」というところからスタートした。家であれば、カラー・ボックスや本棚の上に、オフィスであればそで机の上に置きたいなどの声が上がった。そこから導き出した設置面積(幅と奥行き)の目安が、以下のようなものだった。

 幅に関しては、400mmの天板からはみ出さないこと、奥行きに関しては、320mmの棚に設置できることを目標にした。

 高さに関しては、見た目で小さいと感じる値を目標にした。実際に発泡スチロールなどを使って、高さが異なる箱状のものを十数個試作し、小さく見える高さを求めた。もちろん、低ければ低いほど小さく見えるが、所望する機能を実現するのが難しくなる。性能と小ささを両立できる高さとして、140mmを目標に据えた。

 結論から言えば、EP-805Aは上記の目標を達成した。幅は390mmで高さは138mmにした。奥行きは338mmだが、320mmの棚に設置できるという。

 年々、セイコーエプソンは複合機の小型・軽量化を進めていたが、前機種に比べて設置面積を約38%、体積を約40%削減するのは非常に挑戦的な目標だった。そこで「仮想カタログ」を作り、開発に向けたキックオフ会議でメンバーに配布した。製品紹介はもちろん、問い合わせ先の電話番号が記載されているほど作りこんだもので、店頭に並ぶカタログと遜色ない代物である。目標をあえてリアルに見せることで、開発チーム全体の意思統一を図ったわけだ。

 ここから、“超小型”複合機の開発が本格的に始まる。開発体制も変えた。これまではメカ(機構)部やヘッド部、スキャナ部、メイン基板(電気系)、操作部など、各部での「部分最適化」に特に重きを置いていた。だが、従来の開発体制では一気に40%もの小型化は難しいと判断し、お互いに情報を密に共有しながら連携しながら設計に挑んだ。例えば、各部でスペースを融通し合って調整し、小型化を図っている。つまり、「全体最適」に特に重きを置いたのである。

【9月15日(火)開催】触るインタフェース(応用編)
~ウエアラブルと身体性から読み解く次世代インタフェース~


ウエアラブルデバイスで触覚情報を利用するための基礎と最新技術や、全身触覚と身体性に着目した新しい触覚インタフェースの新潮流について解説する。この分野に精通する3人の講師が、様々な研究開発例とその実装方法を紹介する。詳細は、こちら
会場:BIZ新宿 (東京・西新宿)
コメントする
コメントに関する諸注意(必ずお読みください)
※コメントの掲載は編集部がマニュアルで行っておりますので、即時には反映されません。

マイページ

マイページのご利用には日経テクノロジーオンラインの会員登録が必要です。

マイページでは記事のクリッピング(ブックマーク)、登録したキーワードを含む新着記事の表示(Myキーワード)、登録した連載の新着記事表示(連載ウォッチ)が利用できます。

協力メディア&
関連サイト

  • 日経エレクトロニクス
  • 日経ものづくり
  • 日経Automotive
  • 日経デジタルヘルス
  • メガソーラービジネス
  • 明日をつむぐテクノロジー
  • 新・公民連携最前線
  • 技術者塾

Follow Us

  • Facebook
  • Twitter
  • RSS

お薦めトピック

日経テクノロジーオンラインSpecial

記事ランキング