iRobot社の事業モデル(図:セールス・オンデマンド)
iRobot社の事業モデル(図:セールス・オンデマンド)
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 ロボット掃除機「Roomba」(ルンバ)で知られる米iRobot社は、ロボット専業メーカーとして初めてNASDAQ市場に上場した企業で、2012年には家庭用ロボットを約162万台、「Defense & Security」用ロボットを約29万台出荷した。「iRobot社は、『Dull(退屈)・Dirty(不衛生)・Dangerous(危険)な作業をロボットに任せられるようにする』という思想の下で事業を展開している。『技術者集団』という印象が強いiRobot社の強みは、常に技術革新を起こそうとしていることだろう」(ルンバの日本総代理店であるセールス・オンデマンド 取締役の徳丸順一氏)。

 iRobot社の2012年の売上高は4億3624万米ドル、営業利益は2517万米ドルだった。2013年は4億8000万~4億9000万米ドルの売上高を見込んでいる。しかし、1990年の創業から10年間ほどは売り上げがなかなか伸びず、2003年にようやく5000万米ドルを突破した。「iRobot社は米Massachusetts Institute of Technology(MIT)のロボティクス研究者であるColin Angle氏を中心に、人工知能技術のロボットへの応用を狙って設立された。現在のChairman of the Board, CEOで共同創業者のColin Angle氏は、売り上げが伸びなかった初期のことを『技術はあっても、市場、製造、流通・販売の方法を知らず、資金も不足していた』と回想している」(徳丸氏)。

 転機の一つは、自動走行する偵察ロボット「PackBot」の開発につながる米DARPA(Defense Advanced Research Projects Agency)の契約を1998年に獲得したことだった。2002年にPackBotが初めて米軍に採用されたのと同時期に、家庭用の掃除ロボットであるRoombaを製品化した。「政府や産業向けに開発したロボットに採用した人工知能技術や耐久性を応用しつつ、家庭用に手ごろな価格のロボットを開発したことがRoombaのヒットにつながったのだろう」(徳丸氏)。2004年に自動充電機能、2005年にスケジュール機能を追加するなど、使いやすさを向上させるための改良を継続したことも大きかったと徳丸氏はみる。

 「セールスオンデマンドは2004年からルンバの販売を手掛けた。初期のユーザーからの反応は『これは体重計ですか?』とか『iPodのスピーカーですよね?』といったものだった。“市場に存在しないもの”を理解してもらうことの難しさを実感した。国内の販売では、製品の実演と人による説明を重視し、ユーザー・サポートを充実させることで、少しずつ理解が深まったと思う」(徳丸氏)。

 iRobot社は2012年に、フローリングの床を拭き掃除するロボット「Mint」を手掛ける米Evolution Robotics社を買収した。そのEvolution Robotics社でCEOを務めていたPaolo Pirjanian氏がiRobot社のCTOに就任した。2013年6月25日に開催される「国際ロボット・カンファレンス2013」では、Pirjanian氏がiRobot社のCTOとして初来日し、ロボティクスに関する技術的な展望や、開発中の技術などについて講演する予定だ。