ルネサス エレクトロニクスは、米IBM社を中心とするSemiconductor Research Allianceと共同で、20nm世代以降のMRAM混載プロセスに対応した低誘電率(low-k)膜技術を開発した。詳細をLSI配線技術に関する国際会議「IEEE International Interconnect Technology Conference(IITC)2013」(2013年6月13~15日、京都市)で発表する(講演番号10-2)。講演タイトルは「UV Cure Impact on Robust Low-K with Sub-nm Pores and High Carbon Content for High Performance Cu/Low-K BEOL Modules」。

 通常、比誘電率(k)が2.55のELK(extremely low-k)膜プロセスでは、材料に含まれるポロジェンを約400℃の熱で分解させ、膜中にポア(空隙)を形成する必要がある。また、膜中のSi-C-Si結合を増やして機械的強度を高めるUVキュア工程においても、約400℃の熱処理が必要だった。これに対し、MRAM(MTJ素子)を論理LSIに混載する場合には、約350℃の低温でELK膜を形成する必要がある。それ以上の高温ではMTJを構成する金属が拡散し、MTJの特性が劣化してしまうためだ。

 これまでルネサスでは350℃の低温で形成できるR-ELK(robust ELK)膜技術を開発してきた。R-ELK膜では、最初から空孔を持つ分子を堆積させるため、ポロジェンが必要なく、成膜温度を350℃に抑えられる。今回はR-ELK膜に350℃のUVキュア技術を組み合わせることで、膜の機械的強度を高め、20nm世代以降の微細加工プロセスに対応させた。

(ルネサス エレクトロニクスの資料)
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 膜の機械的強度を示すヤング率は、従来のR-ELK膜では約4GPaだったが、UVキュア後のR-ELK(R-ELKLUと呼んでいる)では約7GPaに改善した。

(ルネサス エレクトロニクスの資料)
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 UVキュア後も膜の比誘電率はほぼ変わらず、しかもプラズマ・プロセスによって膜の比誘電率が上がってしまうプラズマ・ダメージの影響も少ないことを確認した。

(ルネサス エレクトロニクスの資料)
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14~10nm世代に対応