図●内視鏡保持マニュピュレータの試作品。目を覆うように装着しているのがヘッド・マウント・ディスプレイ(HMD)、向かって左側が内視鏡保持マニュピュレータ。
図●内視鏡保持マニュピュレータの試作品。目を覆うように装着しているのがヘッド・マウント・ディスプレイ(HMD)、向かって左側が内視鏡保持マニュピュレータ。
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 東京医科歯科大学と東京工業大学は、内視鏡を利用する外科手術を支援する内視鏡保持マニュピュレータ(ロボットアーム)を開発し、2013年内にも製品化を担当するベンチャー企業を設立する計画を進めている。

 最近の外科手術では、対象手術部分の開口を最小限に抑え、同開口部に内視鏡を挿入し、その手術対象部の画像を見ながら、精密な外科手術を施す「内視鏡下手術」が実施されている。現在は、内視鏡を操作する“スコピスト”と呼ばれる手術支援者が、外科手術担当医師から口頭で指示を受けて、内視鏡視野を最適化するように操作している。外科手術担当医師とスコピストの2人の意思疎通の円滑さが重要になっている。

 これに対して、東京医科歯科大などの研究開発グループは、外科手術担当医師がヘッド・マウント・ディスプレイ(HMD)を装着し、自分が見たい内視鏡の先端画像を、忠実に映し出す操作ができる内視鏡保持マニュピュレータを開発し、製品化を目指している。HMDを“マスター”として、スレーブ側のマニュピュレータを意のままに操る仕組みになっている。

 マニュピュレータはアルミニウム合金製の棒材による平行リンク機構とジンバル機構を組み合わせた仕組みによって、その先端に固定(保持)した内視鏡を望む位置に持って行き、固定できるようになっている。その位置決めには、空気圧(0.4M~0.5MPa)による駆動方式を用いる。「空圧駆動によって柔軟でソフトな力で動作させられる点が生体に対する手術に適している」と、東京医科歯科大生体材料工学研究所の川嶋健嗣教授は説明する。動作空圧は現在0.2M~0.3MPa程度になっている。