市場の拡大を見込んで、中国で医療機器事業を展開しようとしている企業が増えている。日本や欧米など先進国に比べると後発の企業にもビジネスチャンスがあるため、医療機器分野に新規参入する企業の中には、日本を通り越していきなり中国を目指す動きも少なくないという。そこで、中国の医療機器市場の動向/展望や日系メーカーが取るべき事業戦略について、野村総合研究所グローバル製造業コンサルティング部経営リデザイングループ主任コンサルタントの松尾未亜氏に聞いた。(聞き手は高野 敦=日経ものづくり)

──中国の医療機器市場はどのような状況なのでしょうか。

野村総合研究所グローバル製造業コンサルティング部経営リデザイングループ主任コンサルタントの松尾未亜氏

 現在、中国では政府が医療改革を進めています。それに伴って、医療機器の市場規模もどんどん拡大しています。

 医療改革では、国民皆保険制度が整備されてきました。中国共産主義の理念でもあった保険制度(国有企業の従業員を対象とした公費医療制度)は、以前にいったん崩壊しました。しかし、新たに導入された医療保険制度は、都市部/農村部、就労者/未就労者を問わず対象としており、全人口に占める加入者率も2004年に5.7%だったのが、2008年に85.3%まで上昇し、2010年には90%を超えたと発表されています(1)

 こうした保険制度の整備を受けて、現在は病院の設備を充実させることが急務になっています。その中で医療機器の需要も高まっているわけです。

図●中国医療保険の加入者数(率)推移
現在では加入者率が90%を超えている。(出典:『知的創造資産』2010年7月号「中国新医療改革にともなう医療機器ビジネスの投資機会」、原典:『中国衛生統計年鑑2009』)
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