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国際遠隔診療を導入

 韓国の自治体の中で最もヘルスケア産業に力を入れている大邱市では、大学病院が積極的に医療観光を誘致している。

 大邱市の医療機関で受診した外国人患者数は2009年の2816人、2010年の4493人から2011年には5494人と22.3%増加した。大邱市の場合は、2011年の世界陸上大会の影響で外国人観光客が増えたことで、自然に病院を訪問した外国人も増えたともみられるが、大邱市が世界陸上大会に参加する選手団や観光客を対象に積極的に医療観光をアピールしたことで、大邱市の医療機関を信頼して訪問したともいえる。大邱市は市内中心部に「医療観光総合案内所」を運営していて、日本語・中国語・ロシア語などで相談できるようになっている。

 大邱市にあるケミョン大学病院は2012年10月、カザフスタンにユビキタスヘルスケアセンターを設立した。医療観光で大邱市を訪問し、手術を受けた患者の事後ケアを遠隔診療で行うためである。「カザフスタンより医療レベルの高い韓国の病院で手術したいが、術後もちゃんと診療してもらえるかが心配」というカザフスタンの患者のために、国際遠隔診療を導入したのだ。

 カザフスタンには1996年にケミョン大学病院が支援して設立した総合病院があり、その中にユビキタスヘルスセンターを置いた。手術を担当した医者は同センターから送られてくるレントゲンやデータを見ながら、手術を受けた患者とテレビ電話で会話し、術後の健康状態を観察する。

 韓国保険産業振興院の調査によると、海外に進出した韓国の医療機関は、2011年に17カ国74センター、2012年に16カ国90センターある。保健福祉部は2013年に医療機関海外進出200センターを目標としている。

海外進出をサポート

 保健福祉部は2013年1月、医療機関の海外進出をサポートするグローバルヘルスケアファンドを造成し、海外進出プロジェクト受注と投資家募集を担当する専門会社を設立すると発表した。

 外国政府が発注するヘルスケア関連プロジェクトを保健福祉部の専門会社が受注し、韓国の医療機関を参加させる。医療機関が海外に進出するためには、現地の医療制度や医療法に沿って許可をもらわないといけないが、この手続きはとても複雑で時間もかかる。保健福祉部は、プロジェクトを通じて医療技術を認めてもらい、現地政府や企業が病院設立に投資し、韓国は技術と医療専門家を輸出する形で海外進出することを目指す。

 この取り組みのモデルとしているのは、オーストリアの医療機関である「VAMED」。同機関は、医療観光誘致を進める一方、世界各国でヘルスケア・プロジェクトを推進している。