決算説明会に登壇した東芝の久保氏
決算説明会に登壇した東芝の久保氏
[画像のクリックで拡大表示]

 東芝は2013年5月8日、2012年度(2012年4月~2013年3月期)通期の連結決算を発表した(リリース)。売上高は前年度比4.9%減の5兆8003億円、営業利益は同4.1%減の1943億円、純利益は同10.7%増の775億円となった。社会インフラ部門や家庭電器部門が増収だったが、デジタルプロダクツ部門や電子デバイス部門が減収となった。営業損益は全セグメントで増益となったものの、テレビを含むデジタルプロダクツ部門で赤字が続いており、中小型液晶ディスプレイ事業(東芝モバイルディスプレイ)の売却も減益要因となった。

 部門別では、デジタルプロダクツ部門は、売上高が前年度比14%減の1兆4327億円、営業損益は同28億円改善して244億円の赤字だった。このうち、テレビを中心とする映像事業が「500億円弱の赤字」(東芝 代表執行役専務の久保誠氏)である(Tech-On!関連記事)。テレビ事業の赤字は2年連続。パソコン事業は売上高が前年度比14%減の7051億円、営業利益は51億円減の63億円だった。

 電子デバイス部門は、売上高が前年度比7%減の1兆3353億円、営業利益が同160億円増の914億円となった。このうち、半導体やHDD(ハードディスク装置)を含むセミコンダクター&ストレージ事業の営業利益は、前年度比231億円増の958億円だった。主力のNANDフラッシュ・メモリは、上期に価格下落の影響を受けたものの、生産調整によって下期には需給バランスが改善した他、高付加価値製品の販売が拡大した(日経BP半導体リサーチ関連記事)。システムLSI事業の構造改革も増益に寄与した。

 社会インフラ部門は、売上高が前年度比6%増の2兆5642億円、営業利益が同68億円増の1359億円だった。この営業利益は同部門として過去最高水準とする。火力・水力発電システムが国内外で好調だったことに加え、太陽光発電システムや海外での原子力発電システムなどを中心に、社会インフラシステム事業が伸びた。

 家庭電器部門は、売上高が前年度比3%増の5915億円、営業利益が同3億円増の24億円だった。LED照明や海外での空調事業が好調だった他、白物家電も増収となった。ただし、白物家電は「(2011年の)タイ洪水で大きな影響を受けた後、2012年度はV字回復を期待したが、想定よりも回復が遅れている」(久保氏)。

 その他部門は、東芝モバイルディスプレイの売却に伴い、売上高が前年度比38%減の3107億円、営業損益は同330億円悪化して118億円の赤字となった。

 2013年度の連結業績見通しについては、売上高が前年度比5.2%増の6兆1000億円、営業利益が同33.8%増の2600億円、純利益が同29%増の1000億円を見込む。2012年度の業績が同社の事前予測を下回ったことから、2013年度はこの予測を「必ず達成する。未達は2度と起こさない」(久保氏)とした。同社の大きな懸念材料となっている国内原子力発電システム事業については、「2013年度上期は(原子力発電所が)動かないが、下期には再稼働に向けた準備が始まってくる」(久保氏)との見通しを示した。なお、2013年度の連結業績見通しの前提とした為替レートは、90円/米ドル(2012年度は82円)、115円/ユーロ(同106円)である。