図1◎CVTの構造
図1◎CVTの構造
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図2◎エンジン駆動のトルクフロー
図2◎エンジン駆動のトルクフロー
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図3◎モータ駆動のトルクフロー
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図4◎回生時のトルクフロー
図4◎回生時のトルクフロー
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図5◎機械式ポンプを入力側プーリからも駆動できる
図5◎機械式ポンプを入力側プーリからも駆動できる
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 富士重工業が2013年夏に発売するパラレルハイブリッド車「SUBARU XVハイブリッド」(関連記事)は、1モータながらエンジンとモータの間にクラッチ機構を設けて30%の燃費向上を実現した。

 同社の技術者によると、ハイブリッドシステムを採用した分で20%程度、エンジンを改良し、走行抵抗や空気抵抗を削減した分で10%程度燃費を向上させて30%を達成した。ハイブリッドシステムの特徴は、CVT(無段変速機)とモータを組み合わせたことと、モータをCVTの後輪側に配置したこと。

 縦置きのパラレルハイブリッドシステムでは、エンジンと自動変速機(AT)を組み合わせるのが一般的で、エンジンとATの間に薄型のモータを挿入し、さらにエンジンを駆動系から切り離すためにクラッチを設けることが多い。例えば、Volkswagen社の「トゥアレグ」では、エンジンとトルコン付きATの間に、乾式単板クラッチとモータを配置。一方、日産自動車の「フーガハイブリッド」では、エンジンとトルコンなしのATの間に、乾式単板クラッチとモータを置く。フーガの場合、ATのトルコンのあった部分にモータを入れるため、トゥアレグと同様に薄型のモータを用いる。

 これに対し、富士重工業の開発したシステムは、CVTを用いる点と、軸方向に長いモータを使う点が一般的なシステムと異なる。このため、トゥアレグやフーガと異なるレイアウトを開発した。エンジンと組み合わせるCVTは縦置きの「リニアトロニック」を改造したもの。エンジンからの入力は、まずCVT前端のトルコンに入り、その後前後進の切り替え機構を介して入力側プーリに伝わる。CVTチェーンを介して出力側プーリへトルクを伝え、最終的に前後のタイヤを駆動することで4輪駆動システムを実現する。富士重工業はこのレイアウトを大幅に変えずに済むシステムとして、入力側プーリの後輪側にモータを配置する構造を採用した。こうすれば、入出力プーリまでの構造は、これまでのCVTと同じで、後ろ側のハウジングを変更し、最小限の変更でハイブリッドを実現できる。

 モータを内蔵することで、CVTユニット自体はベース車種の「インプレッサ」より10cmほど長くなった。ただし、軸方向に長い外径の小さいモータを採用したことで、フロアトンネル周りの床構造を大きく変えずに搭載できた。なお、CVTが後ろ方向に長くなった分は、プロペラシャフトの長さを短くすることで対応している。