経営方針について説明するJSR 代表取締役社長の小柴満信氏
経営方針について説明するJSR 代表取締役社長の小柴満信氏
[画像のクリックで拡大表示]

 JSRは2013年4月24日、2013年3月期(2012年4月~2013年3月)の連結決算を発表した。売上高は前期比6.2%増の3714億8700万円、営業利益は同2.1%減の352億600万円だった。自動車タイヤ向けのエラストマーを中心に販売数量は増えたが、固定費の増加などで営業利益が伸びなかった。

 経常利益は前期比4.6%増の434億7600万円。これは主に2012年末からの円安による為替差益の影響だという。当期純利益は同14.7%増の302億7800万円。これは、法人税率の低減が主に寄与した。

 石油化学事業は、売上高が前期比6.7%増の2475億5500万円、営業利益が同2.8%減の208億8500万円だった。売上高の増加は、エラストマーの販売数量が増えたためである。減益の理由は、欧州で補修用タイヤを中心に需要が大幅に落ちたことや一時的な固定費の増加だという。

 多角化部門では、半導体材料の売上高が前期比0.8%増の472億3000万円、FPD材料の売上高が同1.0減の543億5800万円と伸び悩んだ。一方、戦略事業の売上高は同38.5増の223億4200億円と大幅に増加した。主に、光学フイルム製品「ARTON」の売り上げが同65%増と高い伸びを記録した影響である。タブレット端末や一部のスマートフォンに向けた光学フイルムとして採用が進んだという。多角化部門全体の営業利益は、同1.0%減とほぼ横ばいである。これは、半導体の最先端技術に対応するための先行投資などでコストがかさんだ影響だとする。

 決算発表会では、同社 代表取締役社長の小柴満信氏が中期経営計画「JSR20i3」の進捗状況も説明した。半導体関連では、ArFレジストのシェアの回復が顕著だという。同社のArFレジストは、90~70nm世代では30%以上のシェアを持っていた。しかし、65nm世代でシェアを落とし、低迷が続いていた。28/22nm世代に特化して注力することで、過去最高水準の40%を超えるシェアを回復できたとする。2013年度は28/22nm世代の半導体生産が本格化する見込みだという。

 今後有望な事業としては、ライフ・サイエンスとLiイオン・キャパシタを挙げた。Liイオン・キャパシタの安全性は電極の作り込みに依存するため、同社が得意とするアナログ的な技術が生きるとする。小柴氏は「どんな産業も30年もすればコモディティー化する。日本の産業は1980年代に生まれたデジタル技術の発展と共に伸びてきたが、もう引越ししなければならない。参入障壁が高いのはアナログ的な技術。素材産業は数ppbレベルの不純物管理を行う典型的なアナログ産業であり、その強みを生かせる」と語った。