Paul Gray氏。DisplaySearch LondonでDirector TV Electronics&Europe TV Researchを務める。
Paul Gray氏。DisplaySearch LondonでDirector TV Electronics&Europe TV Researchを務める。
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有機ELテレビの展望
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4K×2Kテレビの展望
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 米DisplaySearch社の英国拠点のDisplaySearch LondonでDirector TV Electronics&Europe TV Researchを務めるPaul Gray氏がテレビ市場および技術について、世界最大級の家電見本市「IFA 2013」の事前セミナー「グローバル・プレス・コンファレンス」(GPC)で講演した。同氏の講演は、毎年のGPCの呼び物である。問題点をズバリ指摘するからだ。

 昨年のGPCでは、スマートテレビの操作性の問題点を鋭く指摘した。スマートテレビのナビゲートは、受信できるコンテンツが加速度的に増えており、極めて複雑だ。そこで新機軸のユーザー・インタフェースが積極的に導入されたが、Gray氏は「どれも完全なものにはなっていません。音声認識については、欧州だけで100以上の言語があり、地域によって微妙にアクセントが異なるという問題があります。ジェスチャーについては、皆の前で大袈裟な動きを取るのは恥ずかしいし、訓練も必要です。仕草の意味も地域によってすごく変わりますからね」と語っていた。

 今年は有機EL、4K×2Kテレビに関して期待と問題点を述べた。DisplaySearchは有機ELテレビの全世界の出荷台数について、2013年には50~59型で5万台、2014年は同60万台、2015年は同270万台、2016年は45~49型で179万9000台、55~59型は500万6000台、60型以上は19万5000台、と予測している。

 「しかし、大画面の有機ELは、製造が大変難しいことが問題。良品率は10%を切っています」(Paul Gray氏)。確かに韓国Samsung Electronics社のRGB型の有機ELテレビは、昨年の「IFA」に対して今年の「CES」では、展示が大幅に削減された。韓国LG Electronics社の「白色+カラー・フィルタ」型の有機ELテレビは発売に至ったが、良品率、画質の問題はまだ指摘されている。「生産の問題は徐々に解消されると思われますが、それまでは利益率の高い小型サイズで利益を稼ぐしかないでしょう」(Paul Gray氏)。

 4K×2Kはどうか。「図のように2013年から市場は伸びていきますが、フルHDの市場立ち上げ以上に、市場にリーチするためのさまざまな試みが必要でしょう。単に解像度を上げれば良いという話ではなく、ビット深度、フレーム・レートの問題もあります。うまく事を運ばないと、3次元(3D)ディスプレイのような結末になる恐れもあります。中国・台湾メーカーが、4K×2K市場をリードするとみられます。なぜなら、高精細表示はスマートテレビでの漢字表示にぴったりです。HEVCは4K×2Kストリーミング用に注目されていますが、私はむしろHD用のコストとトラフィックを削減するコーデックとしての市場が伸びるとみています」