カルソニックカンセイ(CK)が、製品設計および生産技術の開発体制を強化するために構築した「Engineering Work Manual」(EWM)。開発業務の流れを洗い直し、いつだれがどんな仕事をしなくてはならないかを整理したものだ。そのプロジェクトを主導した同社常務執行役員の成田克之氏に、その概要や狙いを聞いた第2回目(上はこちら)。(聞き手は吉田 勝=日経ものづくり)

成田克之(なりた かつゆき)氏
成田克之(なりた かつゆき)氏
1958年生まれ。1982年に日産自動車入社しシャーシー設計に従事。2003年同社車両要素開発部主管を経て、2008年4月ボッシュ入社、2011年5月カルソニックカンセイ入社。Vice President、グローバルテクノロジー本部技術リソース統括センター部長を経て現職。

――そもそもなぜEWMのような仕組みが必要だったのでしょう

 まず、CKを取り巻く現状からお話しましょう。現在、CKは日産自動車系列のTier1として、ビジネスの大半を日産自動車に依存しています。日産自動車のグローバルでのビジネス拡大に貢献することは必須ですが、国内生産は既に同社の生産全体の1/4程度しかありません。それも、かつてのように日本で開発したクルマを海外で生産するという時代ではなく、海外市場の市場ニーズに合ったクルマを現地で開発して提供することが求められています。当然部品サプライヤーである我々も追従していくことになります。

海外の人材を即戦力化

 また、独立した自動車部品メーカーとして系列外へのビジネス拡大も図っており、いずれは日産さん以外の仕事をもっと拡大したいと考えています。従って、プロジェクト開発費を抑制して、さらなるビジネス拡大のための開発には、業務を標準化して、プロジェクト開発業務の大幅な効率向上を図る必要があります。個人のレベル、グループのレベルで間接業務の直行率(手戻りの少なさ)を大幅に上げ、どの拠点で、どのレベルのエンジニアでも一発OKで均質なアウトプットを出せるようになることが理想です。

 CKの開発リソースは今のところ75%が日本にありますが、海外拠点での開発をより推進して海外へ開発リソースをシフトいく計画です。実際、CKではここ3、4年のうちにグローバルで海外のエンジニアを数百人規模で増やしていく計画です。例えばインドの開発部門について言えば、現在は70人程度ですが今後500人程度にまで拡大が必要になると考えています。ローコストで優秀な人材を確保して即戦力化していくことは、業務効率化と同時に重要課題であり、急速に拡大する海外での開発品質を保ち、それを経験の浅い技術者でも実行できるように早期育成と戦力化をしなくてはなりません。そこで、ベテラン技術者の仕事の進め方を洗い出して、形式知化して、システムに落とし込むことで、新人でもベテランの仕事の仕方を学べて、一定の設計品質を保てるようにと考えた仕組みがEWMです。