カルソニックカンセイは、グローバルでの開発体制を強化するため、製品開発(設計)および生産設備開発(生産技術)の設計手順やノウハウを共有・統一化するための仕組み「Engineering Work Manual」(EWM)を構築、2013年から本格的な運用を開始した。その開発を主導した同社常務執行役員 グローバルテクノロジー本部副本部長 技術リソース統括センター長の成田克之氏に、その概要や狙いを聞いた。(聞き手は吉田 勝=日経ものづくり)

成田克之(なりた かつゆき)氏
成田克之(なりた かつゆき)氏
1958年生まれ。1982年に日産自動車入社しシャーシー設計に従事。2003年同社車両要素開発部主管を経て、2008年4月ボッシュ入社、2011年5月カルソニックカンセイ入社。Vice President、グローバルテクノロジー本部技術リソース統括センター部長を経て現職。

――EWMとはどのようなシステムですか

 EWMは、いわば設計と生産技術開発の教本です。カルソニックカンセイ(以下、CK)にはこれまでも設計標準書の「CAES」やISO文書管理のシステム(「ISOBRAIN」)、その他データベースやCAEツールなどがそろっていました。しかし、各製品の開発フローがどうなっているか、そのフローのどの段階で客先や社内の関連部署とどう連携し、誰が何をしなくてはいけないのか、どんなツールを使えばいいのか、といった開発業務全体の流れが明確に定まっていませんでした。ベテラン技術者の頭の中には入っているのですが、若手には何をどうしているのかが分からなかった。開発のプロジェクト・マネージメントに必要な仕事の流れと具体的な開発の詳細検討業務の関係が明示されていなかったんですね。

 正確に言えば、以前も主要6製品については、開発プロセス(ものづくりプロセス)を決めていたのですが、情報量は十分あるものの、開発フェーズごとに必要となる業務の流れがインプット/プロセス/アウトプットという視点で整理されておらず、開発の全体像を分かりやすく把握できるようなものではありませんでした。

 これに対して、EWMは、時間軸での仕事の流れを規定するとともに、業務プロセスをマクロ(プロジェクト・マネージメント・プロセス)からミクロ(詳細業務)へ4段階に階層化して分かりやすくし、仕事の各フェーズで誰が、どういう順番で何をすべきかを明確にまとめたものです。さらにそれをITシステムに落とし込んだところに特徴があります。ベテランエンジニアに対するヒアリングに基づいて、彼らが実際の仕事上ではこう振る舞っているというもの(ワークフローと設計作業)を整理して、あたかもベテランが思考するようにナビゲーションするシステムに作り込みました。コモディティと呼ぶ製品種類ごとに製品設計で31、生産技術で26のEWMを整備して運用を開始しました。海外拠点の協力も得て、読んで理解できる英文版EWMも日本語版と同時にロールアウトしました。