「INTERMOLD2013/金型展2013」および「金型プレス加工技術展2013」が2013年4月17日に東京ビッグサイトで開幕した。その中で注目を集めていた技術の1つが、射出成形品に装飾用のパターンや皮のような見栄えを付与するシボ加工の技術だ。シボとは、金型の表面に形成する微細な模様だ。この模様の付け方によって、成形品の表面に装飾のためのパターンを施したり、皮のような見栄えを転写できる。

 そうしたシボを加工する技術として、グラファイト電極を使った放電加工を提案したのが牧野フライス製作所である。一方、レーザ加工の活用を提案したのが森精機製作所である。

 牧野フライス製作所の方法は、はじめにSTL形式のデータを作成・編集できる意匠設計用のCAD(「freeform」など)でシボ形状のCADデータを作成。それを同社のCAM「STLCAM」に取り込んで、グラファイト電極の切削および金型の切削(荒取り)のためのNCデータを出力する。そのNCデータを用いて、グラファイト電極を作製するとともに、金型の素材となる鋼材のブロックを切削(荒取り)。最後に、荒取りの終わった鋼材をグラファイト電極で放電加工してシボを含む最終形状に仕上げるというものだ。同社が今回の展示会に出品した金型(キャビティ)の試作品からも分かるように、皮のような見栄えを成形品に付与できる(図1)。

図1●皮のような見栄えを付加する金型(試作品)とその作製に使ったグラファイト電極
牧野フライス製作所が同社のブースに展示したもの。
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 こうしたことが可能になったのは、シボ形状をデザインするfreeformのようなソフトの発達に加えて、グラファイト電極を切削するマシニングセンタや 電極形状を転写する放電加工機において高精度化が進んだことと、グラファイト電極や金型の素材において微細な形状を作り込めるものが出てきたことが挙げられる。牧野フライス製作所によれば、例えば、グラファイト電極は従来は仕上げ加工に使えないと思われていたが、グラファイトの粒径が小さく、微細な形状を形成できるものが出てきている。鋼材についても、放電加工による電極の転写性が高い素材が登場してきているという。

 実際、前述の試作品(電極含む)では、グラファイトの粒径が直径2μmと小さい素材「TTK-8」を東洋炭素から調達して使用。金型の素材にも電極の転写性が高いスウェーデンBoehler-Uddeholm社製の「M333」という鋼材を採用しているという。グラファイト電極の切削には、加工精度が±1μmと高い牧野フライス製作所製のマシニングセンタ「V22iGR」を適用、放電加工には微細なパルスの制御が可能な同社の放電加工機「EDAF2」を用いたとしている。

 想定する用途は、主に自動車の内装材だが、高級カメラのグリップなどに使いたいという声もあるという。