図1 最高50Gサンプル/秒の任意波形ジェネレータ「AWG70000シリーズ」(上の装置)
図1 最高50Gサンプル/秒の任意波形ジェネレータ「AWG70000シリーズ」(上の装置)
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 テクトロニクスは、最高50Gサンプル/秒のサンプル・レートを備えた任意波形ジェネレータ「AWG70000シリーズ」を発表した(図1)。サンプル・レートは競合他社の製品に比べて約4倍を実現。さらに、波形メモリとダイナミック・レンジでも高い性能を達成しており「三つの世界最高性能を備える任意波形ジェネレータ」(テクトロニクス)という。

 同社の任意波形ジェネレータではこれまで、サンプル・レートが24Gサンプル/秒の「AWG7000シリーズ」が最上位機種だった。今回開発したAWG70000シリーズは2機種あり、このうち「AWG70001A」が1チャネル出力で最大50Gサンプル/秒のサンプル・レートという性能を備える。これにより、最大20GHzのワイドバンドRFキャリアや最大12Gビット/秒の高速シリアル信号、コヒーレント光のワイドバンド・ベースバンド信号などに対応する波形を生成できるようになった。

 もう1機種は「AWG70002A」で、こちらは2チャネル出力で最大25Gサンプル/秒のサンプル・レートである。競合他社品では「12Gサンプル/秒品が最高」(同社)という。

D-A変換器の単体販売も


 50Gサンプル/秒ものサンプル・レートは、新たに10ビットD-A変換器を開発することで実現した(図2)。25Gサンプル/秒のASICを2個用い、インターリーブ動作させている。米IBM 社の130nmのSiGe-BiCMOSプロセス「8HP」で製造した。同社は、リアルタイム・オシロスコープ「DPO/DSA70000Dシリーズ」で8HPプロセスの採用実績がある。AWG7000シリーズでは「7HPプロセスを使っていた」(同社)。

 なお、テクトロニクスはこの最大25Gサンプル/秒のD-A変換器を「TDAC-25」と名付け、単体でも外販する。同社と競合しない企業であれば、購入が可能という。

最大で16Gサンプルに


 2個目の世界最高性能は、波形メモリである。最大レコード長は、標準で2Gサンプル。オプション装備を適用すれば、16Gサンプルまで伸びる。これは、「既存製品の8倍」(同社)。これにより、切り替えや中断の必要なしに、長い波形をシミュレーションできるようになる。

 3個目の世界最高性能は、ダイナミック・レンジ性能。スプリアス・フリーのダイナミック・レンジ(SFDR)は-80dBc以上である。同社によると、「SFDRは、競合他社品では-45~-55dBc程度」とされる。-80dBc以上のSFDRにより、品質の高いRF周波数の広帯域信号を出力できるようになった。

 AWG70000シリーズは主に、コヒーレント光通信や高速シリアル通信、レーダなどの研究開発用途に向ける。価格は、いずれも1680万円(税別)。オプションの波形メモリは118万円(税別)である。AWG70001Aは1チャネルの16Gサンプル・レコード長、AWG70002Aは2チャネルの8Gサンプル・レコード長で使用する。

図2 D-A変換器の構成
図2 D-A変換器の構成
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