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本記事は、デジタルヘルスOnlineのコラム、趙章恩の「韓国スマートヘルスケア最前線」 からの転載です。


 韓国Samsung Electronics社の米国法人、Samsung Electronics America社は2013年1月28日、医療機器メーカーである米NeuroLogica社の株を100%買収し、米国法人の子会社にすることを明らかにした。

 米国マサチューセッツ州にあるNeuroLogica社は、2004年に設立されたX線CT装置専門の企業。2011年3月には、移動型の全身X線CT装置の販売許可をFDA(米食品医薬品局)から世界で初めて取得した。患者がCT撮影のために移動するのではなく、患者のいる場所にCT装置を持ってきて撮影できるのが特徴である。

 Samsung Electronics社は今回の買収に関して、「Samsung Electronics社の技術力、ブランド力、グローバル競争力などを生かし、差異化した先端医療機器を開発し、世界市場をリードする医療機器メーカーに跳躍する」などとコメントしている。

4社目の買収

 Samsung Electronics社が医療機器メーカーを買収するのは、NeuroLogica社が4社目となる。2010年には韓国の歯科用CTメーカー「レイ」、2011年には韓国の超音波診断装置メーカー「メディソン」(現在はサムスンメディソン)、さらに同年に米国の心臓検査機器メーカー「ネクサス」をそれぞれ買収した。Samsung Electronics社は、医療機器の中でも特に画像診断装置の分野に力を入れていることがうかがえる。

 2010年6月には、Samsung Electronics社が自ら血液検査装置を発売している。同様の機能を備える従来の機器に比べて大きさが1/10程度と小さいのが特徴だ。加えて、これまで採血から検査結果が出るまで2~3日掛かっていたところを、少量の血液から12分以内に19項目(糖尿・コレステロール・心臓・腎臓疾患など)を検査できる。

「ラインアップがそろった」

 実はSamsung Electronics社は2012年12月に組織改編を実施し、医療機器事業チームを医療機器事業部に格上げした。超音波診断装置を専門とするサムスンメディソンの代表も、専務クラスから社長クラスに格上げした。こうした医療機器事業強化に向けた組織改変後に、早速買収を発表したのがNeuroLogica社ということになる。韓国では、「NeuroLogica社を買収したことでSamsung Electronics社は画像診断装置のラインアップを一通りそろえた」「これはSamsung Electronics社が本格的に世界市場をリードする医療機器メーカーになるという意気込みではないか」といった声が挙がっている。

 韓国のマスコミは、「2013年の医療機器の世界市場規模は3380億米ドル規模。先進国の高齢化により、病気の予防にお金を使う人がますます増えている。こうした中、Samsung Electronics社がこの“おいしい”市場を放っておくわけがない」と分析する。韓国の医療機器業界では、Samsung Electronics社が医療機器の営業、研究開発の中途採用を国内外で大幅に増やしているという噂が絶えない。Samsung Electronics社は医療機器メーカーを買収し、中途採用によって専門家も増やした上で、得意とする半導体・ディスプレイ・IT技術との融合を図ることで、グローバル競争力を高めようとしているようだ。

 医療機器(画像診断装置)はこれまで、米GE Healthcare社、ドイツSiemens社、オランダRoyal Philips Electronics社の3強が世界市場で高いシェアを誇っていた。しかし、ここ数年の間に、医療機器はデジタル家電のように色々な技術が集約する産業になり始めている。Samsung Electronics社のような家電メーカーにも、医療機器で事業を拡大するチャンスがめぐってきた。2013年1月に開催された家電見本市「2013 International CES」の会場では、スマートテレビなどに並び、スマートな医療機器、データ共有による複数のデバイスを使ったヘルスケア・サービスが注目を浴びた。こうした光景を見ると、医療機器市場に大きな変化が到来しているのは確かだ。