開幕直前。プレイステーションのマークが。
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プレイステーション4のマーク。お馴染みのデザイン。
プレイステーション4のマーク。お馴染みのデザイン。
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かつてのプレイステーションのメディア。
かつてのプレイステーションのメディア。
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PS3は広範なサービスにつながることに主眼を置いた。
PS3は広範なサービスにつながることに主眼を置いた。
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「ゲームとあなたを隔てるものはない」のスローガン。
「ゲームとあなたを隔てるものはない」のスローガン。
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ゲーム開発者にフォーカスし、ゲーム開発者の潜在力を引き出す。(1)
ゲーム開発者にフォーカスし、ゲーム開発者の潜在力を引き出す。(1)
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ゲーム開発者にフォーカスし、ゲーム開発者の潜在力を引き出す。(2)
ゲーム開発者にフォーカスし、ゲーム開発者の潜在力を引き出す。(2)
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ゲーム開発者にフォーカスし、ゲーム開発者の潜在力を引き出す。(3)
ゲーム開発者にフォーカスし、ゲーム開発者の潜在力を引き出す。(3)
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プレイステーション4のハードウエア仕様。「SUPER CHARGED PC ARCHTECTURE」である。
プレイステーション4のハードウエア仕様。「SUPER CHARGED PC ARCHTECTURE」である。
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プレイステーション4の専用ワイヤレス・コントローラ(DUALSHOCK 4)
プレイステーション4の専用ワイヤレス・コントローラ(DUALSHOCK 4)
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動画をすぐにアップロードできるのがプレイステーション4の特徴。コントローラのSHAREボタンを押すだけでOK。
動画をすぐにアップロードできるのがプレイステーション4の特徴。コントローラのSHAREボタンを押すだけでOK。
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コントローラ前面のタッチパッド
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ワイヤレス・コントローラと専用カメラ「PlayStation 4 Eye」。
ワイヤレス・コントローラと専用カメラ「PlayStation 4 Eye」。
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ボタン一つで、目的の動作が実現。
ボタン一つで、目的の動作が実現。
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すぐに、できる。
すぐに、できる。
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システムの状態を一時保存して、プレイステーション4本体を節電状態で待機させる「サスペンドモード」。
システムの状態を一時保存して、プレイステーション4本体を節電状態で待機させる「サスペンドモード」。
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省電力型の「第2カスタムチップ」がマルチタスクを実現。
省電力型の「第2カスタムチップ」がマルチタスクを実現。
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「PS Vita」でプレイステーション4本体をコントロール。PS Vitaの5型ディスプレイ上で、PS4専用タイトルをプレイできる。(1)
「PS Vita」でプレイステーション4本体をコントロール。PS Vitaの5型ディスプレイ上で、PS4専用タイトルをプレイできる。(1)
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「PS Vita」でプレイステーション4本体をコントロール。PS Vitaの5型ディスプレイ上で、PS4専用タイトルをプレイできる。(2)
「PS Vita」でプレイステーション4本体をコントロール。PS Vitaの5型ディスプレイ上で、PS4専用タイトルをプレイできる。(2)
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フランスQuantic Dream社のDavid Cage氏がポリゴン(三角形)の技術進化を説明。350から始まり、現在は3万に到達、PS4ではさらに先を行く。
フランスQuantic Dream社のDavid Cage氏がポリゴン(三角形)の技術進化を説明。350から始まり、現在は3万に到達、PS4ではさらに先を行く。
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フランスQuantic Dream社のDavid Cage氏がプレゼンテーションした、超高精細のPS4による“老人の顔”である。まるでハイビジョンVTRの映像のようだった。
フランスQuantic Dream社のDavid Cage氏がプレゼンテーションした、超高精細のPS4による“老人の顔”である。まるでハイビジョンVTRの映像のようだった。
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このレベルまでくると、老人の顔や目つき、肌の様子から、この老人の感情をリアルに感じ取ることが可能。プレーヤーが感情移入するその先に新しいゲームの切り口が見える。
このレベルまでくると、老人の顔や目つき、肌の様子から、この老人の感情をリアルに感じ取ることが可能。プレーヤーが感情移入するその先に新しいゲームの切り口が見える。
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世界中でサポートするゲームメーカーはこれほど多い。
世界中でサポートするゲームメーカーはこれほど多い。
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 ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)による「プレイステーション4(PS4)」の発表会「PlayStation Meeting 2013」が、米国現地時間の2013年2月20日の午後6時、ニューヨークのマンハッタン・センター・ホテルに40カ国以上から1200名以上の報道陣を集めて開催された。PS4は、2006年に発売された据置型ゲーム機「プレイステーション(PS3)」の後継機。据置型としては7年ぶりの新型機だ(Tech-On!関連記事)。

 SCEとしては、この時期にニューヨークで新プラットフォームを発表するのは初めてだ。プレイステーションの新プラットフォームは、毎年6月にロサンゼルスで開催されるゲームの展示会「E3」で発表するのが恒例になっていた。なぜニューヨークで、なのか。「据置型ゲーム機では、米国の市場規模は日本の5倍です。ニューヨークには世界中のマスコミが集まっています。日本の大手の特派員もそろっている」と、ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンのプレジデントである河野弘氏が説明してくれた。

 発売時期は2013年末(予定)。価格や地域ごとの発売日、本体の外観は未公開。今後、5月にロサンゼルスで開催されるE3、8月にケルンで開催される欧州最大のゲームショー「Gamescom」、9月に日本で開催される「東京ゲームショウ」で順次、細部が発表される予定だ。特に本体の形には注目が集まる。

 発表会の冒頭、SCE代表取締役社長兼グループCEOのAndrew House氏は、こう述べた。「ゲームのセンターはもはや、リビングルームではありません。ユーザーの皆様がどこにいてもお楽しみいただける“最高の遊び場”へと進化していきます。そこではモバイルとのコネクテビティーが非常に重要です。エンターテインメントとSNSの融合を新プラットフォームでは徹底的に追求していきます」。つまりユーザーがいるところが、そのまま遊び場になるとの発想だ。

 PS4のシステム設計者(リード・システム・アーキテクト)で、有名なゲームデザイナーのMark Cerny氏はこう言った。

 「新しいプラットフォームの開発は2008年に始まりました。世界のコンテンツ事情に適合させるために、プレイステーションの新プラットフォームはどうあるべきか。歴代のプレイステーションは革新を成してきました。第1世代の「プレイステーション(PS)」はCD-ROMで、第2世代の「プレイステーション2(PS2)」はDVD-ROMで革新しました。第3世代のPS3は広範なサービスにつながることに主眼を置きました。PS4はコンテンツをリバイタルしたい。ゲームが最高の楽しみであることを再度、訴えたい。世界とつながることも大切です。ゲーム開発者の潜在能力を引き出したい。ゲーム開発者に『このプラットフォームは、面白そうだ』『何かがある』と思ってもらえることも重要です。そこで、使いやすさ(Simple)、サクサク感(Immediate)、ソーシャルとの融合(Social)、様々なデバイス/サービスとの連携(Integrated)、ユーザー体験の最適化(Personalized)という五つのキーワードで開発をしてきました」。

 Cerny氏は、Simpleの実例として一つのボタンを押すだけで作業ができること(即座に動画を投稿できるコントローラのシェアボタン)、Immediateではサスペンド/レジュームが即座にできることや、ダウンロードしながらプレイできること(第2カスタムチップの効用)などを挙げた。

PS4の六つの特徴

 PS4の特徴は、以下の6点だ。

(1)ゲーム開発者のニーズに合わせた高い画像処理能力

 ハードウエアの主な仕様は、以下の通り。
 CPU: x86-64 AMD “Jaguar”, 8 cores
 GPU: 1.84 TFLOPS, AMD next-generation Radeon based graphics engine
 メモリ: 8GB(GDDR5、176GB/秒)
 ハードディスク: 内蔵
 光学ドライブ(読み出し専用): BD 6倍速CAV、DVD 8倍速CAV

 なかでも注目はチップを変更したことだ。PS3では米IBM社、東芝と共同開発したワン・アンド・オンリーのマイクロプロセサ「Cell」を使用していたが、今回はx86系の汎用的なLSIに変更した。CPUとGPUは米Advanced Micro Devices(AMD)社製。パソコン(PC)ゲームの開発者が移植しやすいよう配慮した。つまり参入障壁を下げたのである。
 
 これまでのユニークな、というか特殊なアーキテクチャではなく、「開発しやすいアーキテクチャが欲しい」とは、登壇したゲーム開発者が一様に訴えていたことだ。特にプラットフォームに不慣れな開発初期の段階では、このメリットは大きい。PCゲーム専門だった米Blizzard Entertainment社が代表作「Diablo III」をPS4に提供するとアナウンスしたのも、その効果がすでに現れた証拠だ。

 作りやすさと同時にゲームとしての性能も追求した。Cerny氏のプレゼンテーションで「SUPER CHARGED PC ARCHTECTURE」としていたのが印象的だ。つまりPCアーキテクチャをゲーム向けに「スーパーチャージ」したのである。8Gバイトという大容量メモリーはゲーム開発者からの要求に応えたもの。性能追求については「搭載のコンピュータユニット18個は全体で1.84 TFLOPSの演算能力。その性能をグラフィック機能、もしくはコンピューティング機能、またはその二つに、自由に割り当てることが可能」(Cerny氏)という。

(2)高い操作性

 専用ワイヤレス・コントローラ(DUALSHOCK 4)での操作性にこだわった。基本形は従来のPS3用ワイヤレス・コントローラ(DUALSHOCK 3)と同じだが、本体上側に自然色を表現できる3色のLEDを配置した「ライトバー」を搭載した。ライトバーの色とゲーム内のキャラクターの色を連動させ、自分のキャラクターが簡単に識別できるなどの運用を考えている。このDUALSHOCK 4の開発においては、開発者からの意見を取り入れ、コントローラ上側のL2/R2ボタンをより指に馴染む形状に見直し、滑らかな操作感にしたという。
 
 PS4の専用カメラ「PlayStation 4 Eye」は対角視野角85度の広角レンズを持った二つの高感度カメラ・ユニットを搭載。空間の奥行きを検出し、プレーヤーの映像のみを背景から切り取る、2人のプレーヤーの前後関係を把握するなどのアプリケーションを用意している。ユーザーの顔の画像をPS4に登録して顔認識でログインも可能。ジェスチャー入力もできる。ワンボタン操作にもこだわった。従来のSELECTボタンとSTARTボタンの機能を集約させたOPTIONSボタンおよび、動画をアップロードできるSHAREボタンを新たに搭載した。

(3)コンテンツへの速やかなアクセス

 買収したネットワーク・ゲーム専門企業の米Gaikai社の技術により、インターネットを通じてサーバーからゲームのストリーミング配信を受けられる。省電力型の「第2カスタムチップ」により、電源オフ時やプレイ時でもバックグラウンドにてアップロード、ダウンロード作業が可能で、スタンバイ中のアップデートもできる。

 PS4では、ゲームソフトはBD-ROM(とダウンロード)で供給され、映画はBD-ROMやDVDで再生できる。ただ、PS3とは異なるアーキテクチャを採用しているため、ディスク・ベースの下位互換性はない。そこでGaikaiのクラウド技術により、従来のPSからPS3までのタイトルは、ダウンロードもしくはストリーミングで対応するという。つまり、クラウドにおいてプラットフォーム変換することで互換性を担保するのである。将来は、従来のすべてのタイトルがプレイ可能になるだろう。

 「ダウンロード時間をゼロにすることも考えています」とCerny氏は言う。まずは、分割配信。ゲームプレイを始めるに必要なデータの断片から分割してダウンロードし、全てのデータのダウンロードを待つことなく、遊び始められる。残りはゲーム中に、バックグラウンドでダウンロードを継続できる。ゲーム・プログラムのデータ量の大きさから考えると、ユーザーには朗報だろう。

 将来的には、ユーザーの購入履歴とプレファランス(好み)から購入されるであろうゲームを事前に予測し、PS4があらかじめダウンロードを済ませておく、という芸当も可能になる。プレイよりも先にダウンロードされているので、「買う」ボタンを押してすぐにプレイを始められる。

(4)思い立ったらすぐに遊べる

 新たに「サスペンドモード」を搭載。システムの状態を一時保存して、PS4本体を節電状態で待機させる。離れる際にも電源を落とす必要がない。再利用時には速やかに復帰する。ゲームの続きがすぐに実行でき、電源オンでの「ブート待ち」の時間と手間が省ける。スタンバイ時でもゲームのダウンロードやアップデートの実行が可能という。

(5)ソーシャルとの融合

 Cerny氏は「シームレスなダウンロード、アップロードが可能です」という。ストリーミング・ゲーム配信のGaikai社の技術を使った、ゲーム動画をシェアする仕組みのことだ。

 ゲームプレイは常に録画されている。感動したプレイの瞬間を、簡単なボタン操作でクリップして、すぐに友人とシェアできる。ワイヤレス・コントローラのSHAREボタンを押し、直前の数分間のゲームプレイを動画またはスクリーンショットの形式で取り込み、コメントを付け、Facebookなどにアップロードできる。他人がアップロードしたものもすぐに見られる。Ustreamなどのインターネット中継サービスを通じてゲームプレイを生中継することも可能。従来は他のデバイスを経由してネットにアップロードしていたわけだが、それがすべて本体で簡単にできるのが画期的だ。先述の「第2カスタムチップ」によって行えるので、処理はスムーズだ。

 動画には、友人がコメントを投稿できる。ネットワークを通じて、キャラクターの体力を回復させるアイテムや特別な武器などを提供し進行を助けるなど、友人からのゲームプレイ支援が得られる。

(6)機器連携

 リモートプレイができる。Gaikai社による新ストリーミング技術の特徴の一つが、PS4のゲームタイトルを携帯型ゲーム機の「PS Vita」でも遊べることだ。正確にいうと、リモートアクセスできるセカンド・スクリーンとしてPS Vitaを使う。PS Vitaでコントロールし、PS4本体での処理をPS Vitaに飛ばす。外出先でも可能だ。

 Gaikai社CEOのDaivid Perry氏は、ミーティングの壇上でこう言った。「将来的には、ほぼ全てのPS4専用タイトルをPS Vita上で、リモートプレイできるようになるでしょう」。

ゲームそのもので感動を与える

 PS4は、これまで3世代にわたって続いてきた「プレイステーション・レジェンド」の正常進化版だが、PS3とはコンセプトが大きく異なる。PS3は、当時最先端のプロセサ「Cell」を使い、全世界の端末と共同作業を目指す……という壮大な計画を持ち、圧倒的なマルチメディア・モンスターマシンであった。久夛良木健氏の構想が随所に生きていたが、久夛良木氏がソニーを去った後のPS4は、その点は継いではいない。

 流行のネットワークやソーシャルというフレーバーを纏っているが、基本的にはゲームそのものでプレーヤーに感動を与えるソニー的な(つまり高画質な)ゲーム・マシンという、PS2までの基本に立ち返ったようだ。PS3は「家庭の総合エンターテインメントマシン」だったが、PS4はあくまでもゲーム機というステイタスにこだわった。

 ネットワークサービスの「PlayStation Network」などで、音楽配信の「Music Unlimited」、ビデオ配信の「Video Unlimited」、「hulu PLUS」、「Netflix」などに対応するが、それらは現代の機器としては標準的な仕様だ。

 「PS3は、あまりにハードウエア的にユニークなので、ゲームコミュニティで敬遠される」という問題に対して、汎用的ハードウエアによってソニーが対応したことは、ゲーム開発者にとっては朗報であろう。PCゲームメーカーからいつくかの賛同の声があることも、それを証明している。ハードでのユニークさを捨て、ユーザーに対して高い操作性と直感性を提供する“体験でのユニークさ”を追求したのがPS4だ。PS3は「家庭の総合エンターテイメント・モンスターマシン」だったが、PS4はあくまでも高性能ゲーム機だ。作りやすさは、短期的な立ち上げには好ましい。ただ、何年か経った時の、飛躍的発展の可能性の余地は、少なくなる懸念はある。