三菱電機は、鉄道システムの節電につながる「列車回生電力融通技術」を開発し、2013年2月14日に開催した同社の研究開発成果披露会で発表した(図1)。現状の鉄道システムでも、減速中の電車で回生した電力を、加速中の電車に架線を介して供給する節電の技術があるが、実際には回生可能なエネルギのうちの約20%が捨てられている。新技術は、この約20%のエネルギのうちの最大80%を有効活用できるようにするもので、鉄道システム全体の消費電力量を最大5%削減できる(首都圏での過密線区を想定した路線モデルにおけるシミュレーションから導いた値)という。

図1●三菱電機が開発した鉄道システムの節電につながる「列車回生電力融通技術」のシステム概要
[画像のクリックで拡大表示]

 従来技術において、回生可能なエネルギのうちの約20%が捨てられていたのは、架線のところどころに接続された各変電所の電圧が固定されていたためだ。この状態で、減速中の電車から加速中の電車に回生した電力を送ると、各変電所と各電車の位置関係や融通する電力量によって、電車に搭載した機器の耐電圧を超える電圧が減速中の電車にかかる場合が出てくる(図2)。そこで、現状の鉄道システムでは、架線の電圧が機器の耐電圧を超えないように上限値を決め、上限値を超えそうな場合は、電磁ブレーキだけではなく機械式ブレーキも働かせて回生エネルギの一部を熱として捨てている。この熱量が、回生可能なエネルギの約20%に相当する。

図2●電車に搭載した機器の耐電圧を超える電圧が減速中の電車にかかる場合の例
減速中の電車とその電車から回生電力を受け取る電車の間の変電所の電圧が固定されているため、減速中の電車にかかる電圧が高くなり、電圧の上限値を超えてしまうケースが出てくる。

 三菱電機が開発した列車回生電力融通技術は、このように熱として捨てていたエネルギの最大80%を回生電力として融通し合えるようにするものだ。最大80%となっているのは、対象路線内の全ての電車が減速中の場合など、回生しても電力の送り先がない場合があるためだ。ただし、そうした場合も、各電車に蓄電池を積み、回生電力を蓄電池にためるシステムや、駅舎で回生電力を利用するシステムを併用することで、回生電力をさらに有効活用することができる。ちなみに、回生電力を蓄電池にためることを最優先としないのは、蓄電池の充放電によって約20%の損失が発生するからだ。架線を介して電力を融通し合った方がロスが少ない。