新中期経営計画を発表する代表取締役 社長執行役員の石村和彦氏
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採用が進む「Dragontrail」
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同社が強みを持つLTPS向けに新製品「AN Wizus」を投入
同社が強みを持つLTPS向けに新製品「AN Wizus」を投入
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ガラス・インターポーザを2013年内に発売
ガラス・インターポーザを2013年内に発売
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現在の「FPD基板1本足打法」からの脱却を目指す
現在の「FPD基板1本足打法」からの脱却を目指す
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 旭硝子は2013年2月7日、2012年通期(1月~12月)の連結決算を発表した。売上高は前年同期比2.0%減の1兆1899億5600万円、営業利益は同43.9%減の929億4500万円の減収減益だった。通期で1000億円の営業利益を目指していたが、第4四半期の欧州の建築用ガラス事業の不振が響いたという。ほぼすべての事業で出荷は増加したが、欧州事業の不振に加え、電子関連製品の価格下落、エネルギー価格の上昇などが利益を圧迫した。

 電子部門は、売上高が前年から424億円減の3441億円、営業利益が前年から522億円減の813億円だった。売上高の内訳は、液晶ディスプレイ用ガラス基板などのディスプレイ関連が2894億円、電子部材が547億円である。液晶ディスプレイ用ガラス基板の出荷は前年よりも増加したが、価格下落の影響を受けた。ただ、下落幅は第2四半期以降は縮小したという。同基板は円建てで販売しているため、最近の円安により、顧客からの値下げ圧力は緩和されているとする。携帯電話機やデジタル・カメラ向けオプトエレクトロニクス用部材の出荷は堅調だが、半導体関連製品の出荷は減少した。

 ガラス部門は、売上高が前年から102億円増の5646億円で、営業損益は前年が99億円の黒字だったのに対し、40億円の赤字だった。化学品部門は、売上高が前年から87億円増の2573億円、営業利益が前年から36億円減の145億円である。

LTPS向け新製品やガラス・インターポーザを投入

 同社は、2015年に向けた新中期経営計画である「Grow Beyond-2015」も発表した。同社は従来、事業ドメインを「開口部材」(建築用ガラスや自動車用ガラス)、「表示部材」(ディスプレイ・ガラスやディスプレイ部材)、「エレクトロニクス&エネルギー部材」(オプトエレクトロニクス部材やエネルギー部材)と定義していた。これを「快適な生活・空間領域」「クリアな映像・通信領域」「クリーン&グリーンなエネルギー領域」に組み替える。同社の営業利益は、2010年に2292億円を記録して以降は右肩下がりだが、2013年から業績を反転させ、再び成長軌道に乗せることを目指す。

 「クリアな映像・通信領域」では、2011年1月に投入したスマートフォン/タブレット端末向けカバーガラス「Dragontrail」の採用が急拡大しているという。2012年には20社・60機種以上が同製品を採用したとする。米Apple社が採用していることも公表した。

 同社の中小型液晶ディスプレイ用ガラス基板「AN100」は、低温多結晶Si(LTPS)TFT向けでは圧倒的なシェアを誇る。同社は、熱収縮がより小さい新製品「AN Wizus」を市場投入予定であることも明らかにした。また、ガラス基板に微細な穴を開けたガラス・インターポーザ基板も2013年内に発売するという。

 同社の2012年の営業利益は、電子部門が4分の3近くを占めるといういびつな構成になっている。これを、2015年には半分強を電子部門、それ以外の部門で半分弱の構成にすることを目指す。同社 代表取締役 社長執行役員の石村和彦氏は「FPD基板1本足打法から脱却したい」と語った。