自動車技術会は2013年1月30日、2011年に発行した自動車技術ハンドブック第10分冊「設計(EV・ハイブリッド)編」の電動車両技術を紹介する講習会を東京で実施し、トヨタ自動車や三菱自動車のエンジニアが講演した。

 最初に登壇したトヨタ自動車のHVシステム制御開発部部長の阿部眞一氏は、「HEV、PHEVシステム設計の最新動向」として、燃費向上の原理、トヨタハイブリッドシステムの進化、他社のHEV(ハイブリッド車)の動向、PHEV(プラグインHEV)の最新動向を説明した。

 トヨタハイブリッドシステムの進化では、2代目「プリウス」から3代目プリウスでの変更点として、電池電圧を昇圧する電圧を500Vから650Vに高めたこと、モータに減速機構を取り付けたことを挙げた。また、エンジンでは燃料消費率が230g/kWhとなる領域を拡大することで燃費を向上させた。小型車「アクア」のエンジンでもこの考え方を応用したという。今後のストロングハイブリッド車のトレンドは、ハイブリッドシステムの伝達効率とエンジンの熱効率の両方を高めることと述べた。

 PHEVについては世界の動向に触れ、EV(電気自動車)走行距離を60km以上と長くした車両と、40km以下の比較的短い車両に2極化していると解説。60km以上となるのが、三菱の「アウトランダーPHEV」や米GM社の「Chevrolet Volt」、中国BYD社の「F3DM」など。一方、トヨタの「プリウスPHV」をはじめ、米Ford Motor社の「C-MAX Energi」やホンダの「アコードPHEV」などは40km以下となる。EV走行距離を伸ばすためには大型のモータ、容量の大きな電池を積むことが必要で、どうしてもコストが高くなる。一方、EV走行距離が短いとコストは安くなるものの、長距離走行したときの燃費向上効果に限界がある。

 三菱自動車開発本部EV・パワートレインシステム技術部の半田和功氏は、「EVシステム設計の基礎とEV技術の可能性」について紹介した。システム設計では、電力の供給側と需要側のバランスをとることが必要とした。これには、まず駆動用電池とインバータのバランスをとるが、それ以外のエアコン、DC-DCコンバータ、ヒータ、電動パワーステアリングなどの電力需要も考慮すべきである。モータ以外の電力はそれほど高くないが、こうした点を見逃すと車両の目標性能が達成できなくなるからだ。

 例えば、モータの出力が60kWとすると、エアコンやヒータは3~5kW程度と小さいが、夏場や冬場は常に使う必要があり電池の出力がとられる。こうした点を考慮して、発進直後はエアコンをかけないといった制御が必要。