横井行雄氏
横井行雄氏
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 電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)に向けたワイヤレス給電技術の国際標準化の作業が急速に進んでいる。トヨタ自動車や日産自動車、ドイツBMW社、米GM社などの世界の自動車メーカーが駆け引きを繰り広げる。日本の窓口である自動車研究所(JARI)や自動車技術会(JSAE)、ブロードバンドワイヤレスフォーラム(BWF)の委員として標準化作業に関わる横井行雄氏に現状と今後の動向を聞いた。

――標準化作業の舞台の一つが、国際電気標準会議(IEC)/国際標準化機構(ISO)の共同部会である「PT61980」。進捗はどうか。

 2012年に入って議論が一気に進んでいる。現在、一部の内容で作業原案(WD:Working Draft)の議論が終わり、委員会草案(CD:Committee Draft)の内容が固まった。2013年初頭に委員会で開示し、2013年夏には投票に移る予定である。順調にいけば、2014年に国際標準(IS:International Standard)になるだろう。

 PT61980には現時点で三つのグループがある。第1が「PT61980-1」で、自動車のワイヤレス給電技術に関する一般的な要件を決める。具体的には、漏れ磁場や人体防護に関する指針などが対象となる。自動車向けワイヤレス給電の主流は、コイルとコイルを向かい合わせて電磁波で電力を伝える方式。各国の電波法に則るのが基本だが、自動車用途では数~数十kWと大電力の装置を一般人が扱うことになるので過去に例がない。安全性や漏れ磁場などに関する基準をどうするのか、といったことを新しく考える必要がある。

 第2の「PT61980-2」が制御通信の仕様に関するグループ。ワイヤレス給電では、車両側の受電装置とインフラ側の給電装置の間で制御信号をやり取りして電力を伝送するタイミングなどを決める。第3の「PT61980-3」が、電磁場を使った仕組みの仕様に関わるグループだ。周波数帯やコイルの形などが対象である。

 これら三つのうち、CD案が固まったのはPT61980-1。一方でPT61980-2やPT61980-3の内容が固まるのは少し時間がかかりそうで、最終的なISの発行は2017~2018年ごろになるだろう。現在はPT61980-1のISの発行に合わせて、PT61980-2やPT61980-3については技術指針であるTS(Technical Specification)を示す方向で話が進んでいる。このため、2014~2015年ごろには実用化に必要な一通りの仕様を揃えられるだろう。

 このほか、今後は第4のグループとしてマイクロ波を利用したワイヤレス給電技術の検討が始まるかもしれない。

――とくに注意したい他国の動きはあるか。