図●「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発」プロジェクトの概要
図●「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発」プロジェクトの概要
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 技術研究組合の光電子融合基盤技術研究所(PETRA)は、経済産業省から「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発」プロジェクトを受託し、技術開発を開始したと、2012年11月28日に発表した。この光エレ実装技術開発プロジェクトは、2012年度(平成24年度)から10年間にわたって、約300億円を技術開発資金として投入し、日本の電機メーカーが国際競争力を持つ独自の「光電子集積サーバー」などを事業化することを目指す。

 PETRAの理事長を務める沖電気工業の川崎秀一代表取締役社長は、同プロジェクトの成果を基に「3年後に事業を担当する新会社を“オールジャパン”体制で創業する」と説明した。「現在、3年後の新会社設立を目指し、準備を始めている」という。同新会社は「PETRAを基に設立する可能性を検討している」と説明する。

 同プロジェクトのプロジェクトリーダーを務める東京大学の荒川泰彦教授は「通信量が指数関数的に増大し、2025年にはサーバーやルーターなどの通信インフラの電力消費量が2500億kWに達し、総電力量の1/4に達すると予想される。この問題を解決するために、電子機器の電気配線部を光化する光配線技術と電子回路技術を融合する光エレクトニクス実装システムを実用化する」と説明した。

 今回開始する光エレ実装技術開発プロジェクトは、経産省と内閣府の府省連携に基づき、PETRAに参加する企業9社のうちの7社〔沖電気、東芝、NEC(日本電気)、NTT(日本電信電話)、富士通、古河電気工業、NTTエレクロニクス〕と、産業技術総合研究所、光産業技術振興協会の9機関が参加し、研究員総数約120人で推進する。

 経産省が研究開発資金を提供する光エレ実装技術開発プロジェクトは、2012年度から始めた府省連携による未来開拓研究制度の1つとして支援される(図)。その府省連携の相手となる内閣府側は、最先端研究開発支援プログラム(FIRST)の1つとして推進され、東京大学の荒川教授が中心研究者を務める「フォトニクス・エレクトロニクス融合システム基盤技術開発」(PECST)が連携対象になる。PECST技術開発プロジェクトが技術開発するフォトニクス集積回路の研究開発成果が、光エレ実装技術開発プロジェクトの基盤技術として提供される仕組みである。PECST技術開発プロジェクトでは、2012年にLSIチップ間を光インターコネクトで接続できるシリコン光配線集積回路の開発に成功しており、3.5Tbps/cm2の世界最高伝送密度を達成している。

 光エレ実装技術開発プロジェクトのプロジェクトリーダーである荒川教授は「現行の電気配線に対して、消費電力を1/10に、実装面積を1/100に、配線密度を10倍にし、現行のサーバーラックをボードサイズまで小型化し、消費電力を30%削減することを技術開発目標とする」と説明する。この技術開発成果を基に、3年後に設立する新会社は事業化を始める。新会社が生産設備を所有するのか、海外のファウンダリーに生産を委託するかどうかは「新会社が事業化で成功することを目指して、最適な態勢を検討する」と、沖電気の川崎社長は説明した。

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記事掲載当初、古河電気工業の社名を古川電気工業と誤って表記しておりました。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。