田中耕一氏の講演の様子
田中耕一氏の講演の様子
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 日経エレクトロニクスとデジタルヘルスOnlineは2012年11月21日、イベント「デジタルヘルス・サミット2013 ~産官学医の大連携で、新産業を創出せよ~」を目黒雅叙園(東京都目黒区)で開催した。200人を超える来場者が参加、デジタルヘルスという新たな産業創出に向けてさまざまな議論が繰り広げられた。

 午前中は、産官学医それぞれの立場のリーダーが登壇した。まず、経済産業省 商務情報政策局 ヘルスケア産業課長の福島洋氏が「経済産業省におけるヘルスケア産業政策について」と題して講演。2012年6月に策定された医療イノベーション5か年戦略の内容や、同戦略に基づく医工連携の推進施策などについて説明した。

 次に、「日本のものづくり力を医療に」と題し、島津製作所 シニアフェロー 田中最先端研究所 所長の田中耕一氏が登壇。異分野融合による新たな産業の創出の必要性を、自らの「失敗と挫折の歴史」を引き合いに出しながら説明した。

 医療法人社団KNI 理事長の北原茂実氏は、「「病院」がトヨタを超える日」と題して講演。「医療の産業化」の重要性を唱えると同時に、同氏らが手掛ける「デジタルホスピタル」などの取り組みについて紹介、多くの企業の技術力の結集を呼びかけた。

 続いて、「ユビキタス地域医療からスマート地域医療に」と題し、医療法人・社会福祉法人 真誠会 理事長の小田貢氏が登壇。鳥取県米子市で実践している、ICTを活用した地域医療・在宅医療の例を紹介しながら、今後は地域医療・在宅医療に大きな産業の可能性があると指摘した。

 青森県知事の三村申吾氏は、「青森から世界へ-次世代のヘルスケア地域モデルをめざして-」、大分県知事の広瀬勝貞氏は「東九州メディカルバレー構想について」と題して講演。それぞれ、両県における医療・ヘルスケア関連の取り組みについて紹介。それらの取り組みを海外に発信していく「日本モデル」を構築する意向を語った。

 また、両知事と、経済産業省の福島氏を交えたパネル討論では、海外に発信する日本モデルの具体像として「ものづくり力(技術)と医療サービスを一体化したインフラとして展開することが必要」とのメッセージが示された。

 次に、ドコモ・ヘルスケア 代表取締役社長 竹林一氏は、「我々が目指すヘルスケア・サービスの世界」と題して講演。ヘルスケア・サービスの立ち上げに向けて、利用者のモチベーションを向上させる仕掛けの必要性などについて述べた。ローム 常務取締役 研究開発本部長の高須秀視氏は、「デバイス技術を強みにヘルスケア市場開拓」と題して講演。ヘルスケア分野に利用可能なさまざまなデバイス技術について紹介した。

 また、竹林氏と高須氏が登壇したパネル討論では、「技術は存在する」という前提で、デジタルヘルス産業創出のためには、「サービスや仕組みの構築が不可欠」(竹林氏)、「官のリードや国際標準が必要」(高須氏)といった意見が示された。

 午後は、「動きだす介護ロボット」「次世代医療・ヘルスケア機器開発の未来」という二つのセッションを展開。講演した各社から、それぞれの取り組みが紹介された。

 全講演プログラム終了後の交流会では、講師と参加者の名刺交換の列が絶えず、新産業創出に向けたネットワーク構築を積極的に図っている姿が印象的だった。