京都マイクロコンピュータは、パシフィコ横浜で開催された展示会「Embedded Technology 2012」で、同社の仮想ハードウエア開発キット「HARVEST」が、ブラザー工業の最新インクジェット・プリンター「MFC-J4510N」の開発で使われた事例を、実機とともに展示した。
MFC-J4510Nは、タッチ・パネルで操作できるカラー表示画面を備えている。ブラザー工業は、HARVESTを利用することで、このカラー表示画面をシミュレートできる仮想ハードウエアを作成した。この仮想ハードウエアは、Windows上でアプリケーション・ソフトウエアとして動作する。仮想ハードウエア上では、プリンターの実機に搭載するバイナリ・コードをそのまま動作させることができる。パソコン上に実機と同様の環境を実現することで、ユーザー・インタフェースのプログラムの開発に役立てた。
HARVESTは、オープンソースのプロセサ・エミュレータである「QEMU」を利用する。京都マイクロコンピュータでは、QEMUをWindowsで使えるライブラリ(DLL)の形にした。HARVESTを利用する開発者は、米Microsoft社が提供するソフトウエア開発環境「Visual Studio」で、QEMU向けにターゲット製品の仮想ハードウエアのプログラムを記述する。このプログラムをビルドし、QEMUライブラリとリンクさせることで、仮想ハードウエアが完成する。HARVESTには、仮想ハードウエア上で動作するプログラムのネーティブ・コードをデバッグできるデバッガも付属している。