医療機器分野への新規参入を目指す企業が増えつつある。しかし、医療機器の開発には特有のノウハウが必要だ。こうした中で、医療機器の開発に慣れていない企業を支援するサービスに、新たなビジネスチャンスを見いだす動きも活発になってきている。特に、新規参入企業にとって大きな障壁である、各種の規制をクリアするための支援は、最も注目されている分野と言える。

 こうしたサービスを提供する企業は幾つか存在するが、そのうちの1社が、世界的な第三者製品安全認証機関である米UL社の日本法人、UL Japanである。同社は現在、医療機器の試験・認証サービスなどを手掛けており、その事業規模の拡大を狙っている。同社 医療機器部 部長の肘井一也氏に話を聞いた。

(聞き手は小谷 卓也)


宮田喜一郎
UL Japanの肘井氏

――UL社は、家電製品などの製品安全認証、いわゆる「ULマーク」で知られますが、医療機器関連のサービスに参入した背景を教えてください。

 UL社は、社会のトレンドに合わせて、対象とする製品の範囲を広げてきています。最近では、太陽電池モジュールや風力発電機といったエネルギー関連製品や、食品・水まで事業範囲を広げています。医療機器も、その一つです。

 医療機器に関わるようになった直接のきっかけは、薬事法で規定されている登録認証機関(2005年の薬事法改正で、Class2の指定管理医療機器は、厚生労働省が指定した登録認証機関での第三者認証を受けることになり、UL Japanを含めて13機関が登録されている)になったことです。

 今後は、薬事法の登録認証機関としての業務にとどまらず、幅広く医療機器開発の支援を手掛け、事業を拡大していく考えです。

――医療機器開発の周辺に、大きなビジネスチャンスの可能性を感じているというわけですね。

 まさに、追い風が吹いていると思います。政府の成長戦略で医療機器分野の活性化が掲げられていますし、産業界としても大企業、中小企業の新規参入の動きが活発になっています。高齢者社会や医療費高騰といった社会要因を背景に、ホーム・ヘルスケアを実現するための新たな医療機器の開発も求められています。

 一方で、日本に限らず各国の法規制は複雑で、要求される製品試験や認証項目は多種多様です。メーカーが迅速に対応するには、膨大な労力を必要とします。特に新規参入企業は、それらの要求項目に関する情報を正しく入手することにすら困窮しています。こうした中で、我々が取り組める領域は広がっていくとみています。