IT技術を融合させた研究開発

 今回の先端医療複合団地は、これまで韓国に点在していた医療複合団地を集約すると同時に、世界規模の研究拠点にすることを狙ったもの。特に、IT技術との融合を図った次世代の医療技術の研究開発を担う。Samsung Electronics社やLG Electronics社など、韓国エレクトロニクス企業が持つIT関連のノウハウを活用し、新機軸の研究開発を進めることも視野に入れる。

テグ
建設予定図

 総敷地面積は103万m2で、研究施設の他、政府の施設や政府と企業が交流するためのコミュニケーション・センターなどが建設される。さらに、同団地で研究開発に携わる技術者や家族のための住居、科学技術学校などの建設も予定されている。

 既に、韓国内企業の誘致だけでなく、国外企業の誘致を進めている。「日本、米国、スウェーデン、ドイツなどの企業と、誘致に向けて接触している」(Daegu Metropolitan City Deputy Director of High-tech Medical Cluster MarketingのPark Joo Heum氏)という。

入り口から出口までを集積

 この先端医療複合団地だけを取り出しても、壮大な計画と言える。しかし同複合団地は、あくまで「世界の先端医療産業のハブになる」ことに向けた、“入口”の要素であると位置付けられている。テグ市が描いているのは、同複合団地で開発された技術や製品を消費する“出口”まで市内に集積させることだからである。

テグ
起工式の様子

 テグ市はもともと、国内初の漢方薬市場や西洋医学病院が開かれた歴史を持つなど、韓国の中でも医療が発展してきた地域の一つである。現在でも、ソウルに次ぐ数の医歯薬学系の大学病院がある他、12の総合病院と7500人を超える専門医が存在するなど充実した医療環境がある。臨床試験を実施するための施設も多いという。

 こうした環境を生かして、先端医療複合団地で生み出した最先端の技術を、市内の医療機関で積極的に利用していく考えである。同時に、テグ市ではここ数年、市内の医療機関に市外あるいは海外の患者を取り込む、いわゆる「医療観光」事業の強化に取り組んでいる。医療観光においても将来、最先端技術の導入をウリにすることで、事業規模の拡大を図っていこうというわけだ。