東九州
2012年2月に開催された、東九州メディカルバレー構想の推進を目指す大会の様子

 大分県と宮崎県が共同で掲げる「東九州メディカルバレー構想」。新たな医療関連産業の創出に向けた象徴的なモデルとして、にわかに注目を集め始めている。

血液・血管関連に強み

 東九州メディカルバレー構想は、医療産業を東九州地域に集積させることを目指すもの。東九州地域は現在、旭化成メディカルや川澄化学工業、東郷メディキットといった、血液・血管関連分野で有力な企業が立地し、同分野では世界有数の開発・生産拠点となっている。

東九州
旭化成メディカルの人工腎臓などの製品群

 例えば、血液透析に利用する、旭化成メディカルの人工腎臓(ダイアライザー)は、国内では1位、世界でも2位のシェアを誇る。こうした既存の基盤を生かしながら、予防医療や各種の医療サービスまで、新たな医療・健康機器産業の集積を目指そうというのである。

 大分県には、東芝やソニー、ルネサス エレクトロニクスなど半導体関連の企業も進出している。将来的には、こうした企業の技術の活用も視野に入ってくる。

 2012年2月には、東九州メディカルバレー構想を全国に発信し、推進を図るための大会が大分市で開催された。県内外から200人以上の来場者が参加するなど会場は熱気に包まれ、関心の高さをうかがわせた。冒頭で挨拶した大分県知事の広瀬勝貞氏は、「一気に構想を立ち上げていきたい」と力強く宣言した。

総合特区の一つ

東九州
大分県知事の広瀬勝貞氏。2012年2月に大分県で開催された推進大会で、構想を「一気に立ち上げる」と宣言した

 「現時点では、総合特区の中で最も内容がしっかりとしていて、期待できる」─―。医工連携を推進する、ある医療関係者は、東九州メディカルバレー構想をこう評する。

 この医療関係者が指摘するように、東九州メディカルバレー構想は、総合特区の一つでもある。総合特区とは、政府が掲げる「新成長戦略」を実現するための突破口として、2011年6月に成立した「総合特別区域法」に基づき創設された制度。国際競争力の強化や地域の活性化につながる取り組みに対して、規制の特例措置や税制上の支援措置などを講じて支援するものだ。

 2011年12月末に、総合特区の第1次指定の対象が発表され、東九州メディカルバレー構想はその一つに選ばれた。総合特区には、日本経済の成長エンジンとなる産業の育成に関する取り組みを対象とした「国際戦略総合特区」、地域の資源を最大限活用した先進的な地域活性化の取り組みを対象とした「地域活性化総合特区」の二つの区分がある。東九州メディカルバレー構想は、後者に当たる。

 政府は、新成長戦略の基本方針として、医療関連分野を国の成長を牽引する産業として明確に位置付けている。このため、総合特区の中には、医療とものづくりを融合させた産業に関連する取り組みが多く含まれている。

東九州
デジタルヘルスに関連する主な総合特区(第1次指定)

 例えば、国際戦略総合特区としては「京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区」や「関西イノベーション国際戦略総合特区」などがそれに当たる。一方、地域活性化総合特区としては、「健幸長寿社会を創造するスマートウエルネスシティ総合特区」などがある。