Peek氏
林氏
 Peek氏は「Dyson社はどんな技術も受け入れる。何らかの問題を解決するか、進歩につながるかどうかが採用の基準」と、技術が社内発か社外からのものかは重視しない社内文化が同社にはあるとする。創業者のJames Dyson氏が技術のもたらす力を確信しているからこそ、市場調査を軽視するような経営判断ができるとも言う。同社のサイクロン掃除機は、筐体を透明にして吸い込んだゴミを見えるようにしている。製品化前の市場調査ではゴミが見えないことを望む声が多かった。同氏は、ゴミをよく吸引できる技術に意味があると考え、それをあえて見えるようにした。

 新技術の採用基準に関する質問として、会場から「スマートフォンで家電を操作する“スマート家電”を製品化する予定はあるか」との質問があった。Peek氏は「それがギミック(gimmick)なら開発しない」と断言した。売り上げを少し上げるためだけの小手先の技術開発なら意味がないという意味だ。逆に、ユーザーや社会に変革をもたらすと確信すれば、たとえ後発であっても採用に踏み切るといえる。

アイデアを生む仕組み作りに貪欲

 では、製品化に値する“技術で解決する課題”はどうやって見つけ出すのか。会場から質問が出た。

 「およそ4000人いる社員からアイデアを募る仕組みがある。誰でも既存の製品などに不満があればそれを提出する」とPeek氏は言う。同社では、良いアイデアを毎月、そして毎年、表彰している。さらに「Challenge Dyson」と名付けたイベントを毎年催して、独創的な発案を奨励している。2012年は、ラジコンの部品と同社製品の部品を自由に使ってラジコン・カーを開発して競わせるという内容だった。ここで重要なことは、失敗から学ぶ姿勢という。Dyson氏は、発想が柔軟な社員を望み、新入社員の採用に力を入れている。英国以外にマレーシアに拠点を置き、多様な国籍の社員がいることも斬新なアイデアをもたらしている。