「英Dyson社はスマート家電を製品化するのか」「社内で奇抜なアイデアを出すと『儲かるのか』と聞かれる?」「解決すべき問題はどうやって探しているのか」「日本のデザインは斬新だが品質管理が厳しくて商品化しにくいとの見方をどう思うか」「技術主導だと自前主義に陥る危険性があるのでは」―。2012年9月、サイクロン式掃除機や羽根のない扇風機を製品化している英Dyson社(関連記事)の技術者に、こんな質問をぶつけるイベントがあった。

Peek氏(左)と林氏
Peek氏(左)と林氏

 9月12日、東京・表参道に6日間の期間限定ストアをDyson社はオープンした。ここで、ダイソン(東京都千代田区)シニアデザイン エンジニアのMartin Peek氏と著名なITジャーナリストの林信行氏が、30人ほどの聴講者を前に対談するイベントが9月13日に開かれた。まずPeek氏は、同社がマーケティング志向ではなく技術主導の会社であること、9月に発売したサイクロン式掃除機の新製品に独自開発のモーターや新型電池を搭載していること、持って軽く感じる重心設計にしていることなどを紹介した。続いて林氏と聴講者が、Peek氏へいくつかの質問を投げかけた。

技術主導の弊害はないのか

 林氏は「技術主導だと自前主義に陥る危険性があるのでは」と問うた。これは、Peek氏が「Dyson社は市場調査を実施してもそれで方向性を決めることはしない。開発は技術主導でなくてはならない。(商品化するのは)新技術でさまざまな課題を解決できる場合だ」と語ったことを受けたもの。一般に、技術主導の会社における経営の失敗の原因が、いわゆるNIH(not invented here)症候群にあるとの指摘は多い。自社開発しなかった技術を採用しない企業文化が、非効率な経営をもたらすとの見方である。