大学発新産業創出拠点プロジェクトの特徴は、推進委員会が研究プロジェクトと事業プロモーターチームの組み合わせを審査して採用する点にある。研究プロジェクトの申請時に、7チーム採用された事業プロモーターチームを指名して申請することができる(複数の事業プロモーターチームを指名したり、7チームすべてを指名することもできる)。

 10月22日に開催された大学発新産業創出拠点プロジェクトシンポジウムは、事実上のキックオフミーティングであり、7つの事業プロモーターチームと各大学・公的研究機関の関係者、行政関係者などが参加した。同シンポジウムでは産業連携・地域支援課は「平成24年度大学発新産業創出拠点プロジェクトの取り組み状況」などを説明した。同課の寺崎智宏課長補佐は「平成25年度の同事業の概算要求額は20億3400万円と7億3400万円増額している」と説明し、平成25年度に新規採用するプロジェクト分などを示唆した。

 寺崎課長補佐は「平成24年度は研究プロジェクトとして168件の申請があり、27件を採用した」と報告した。研究プロジェクトの申請時(正確には審査は2回受ける。第2次申請時)に事業プロモーターチームの指名は「1チームを指定が25件、複数チームを指名が17件、全チーム指名が3件だった」と報告した。採用した27件の研究プロジェクトの特許出願状況は、「申請者だけが特許申請している“単願”が18件、共同研究相手などと複数が特許申請している“共願”が8件、出願している特許がないが1件だった」という。

 今年度の27件の研究プロジェクトは、地域別には東北、関東、近畿、九州の4地域の大学・公的研究機関から申請されたものを選んだ。この結果、北海道、中部、中国、四国地域からの採用は無かった。結果として地域別では違いが出た背景は「事業プロモーターの活動地域性が影響したようにみえる」という指摘に対して、事業プロモーターチームのDJBキャピタル(東京都千代田区)の山口泰久取締役投資部長は「たまたま結果的にこうなったもの。今回、採択されなかった地域は、当該研究プロジェクトを事業化したいという、有力な事業マネージャー人材を当該地域などから見つけられなかったためではないか」とコメントした。

 シンポジウム後半に実施されたパネルディスカッションでは、事業プロモーターチームの1つである東京大学エッジキャピタル(東京都文京区)の郷治友孝代表取締役が「今年始めた新施策のために、各研究プロジェクトの中身を調べるデューデリジェンスの時間不足などが実質的に厳しかった」と語った。同様に、事業プロモーターチームであるジャフコの伊藤毅投資部産学連携投資グループリーダーは「各研究プロジェクトを申請した研究代表者が所属する大学や公的研究機関の学内組織である産学連携本部などの強力な支援が無いと事実上は事業化は難しいだろう」と指摘した。

 同新施策の推進委員会の委員である独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)の三木俊克理事長は「本施策は、ベンチャー企業の創業などを通して、大学などの研究成果を事業化し、日本にイノベーションを起こすことを目指している」と解説し、「技術移転などを通した新産業振興手段と並行して日本にイノベーションを起こしたい」とまとめた。