「アナログ回路の設計にもコスト意識が欠かせない」。こう説くのは、群馬大学教授の小林春夫氏である。産業界と大学で、測定器などのシステム設計からデジタル信号処理、A-D変換器をはじめとするアナログ回路に携わってきた。高性能化・多機能化によって高く売れる設計を実現することはもちろん重要だが、次代の産業界に大きな流れを生み出すのはコスト重視の技術になると見る。(聞き手は、三宅 常之=Tech-On!)
主に容量を競うメモリならコスト重視というのは分かる。アイデア次第で高付加価値設計が可能なアナログ回路の製品分野で、コスト重視を訴えるのはなぜか。
測定器メーカーの技術者だった1987年くらいだったと思います。米国の大学を訪れたことが、コストの重要性を意識するきっかけとなりました。訪れた研究室ではアナログICをCMOS技術で実現しようとしていました。当時、アナログといえばバイポーラICというのが当たり前でした。なぜ性能が求められるアナログICをわざわざCMOSで作ろうとするのか。研究者の答えは「産業界の要請があるから」でした。