「野球中継とTwitterとの連動機能は需要が多い。視聴者の4人に1人がTwitterの投稿画面を表示しながら中継を見ている。VOD(ビデオ・オンデマンド)サービスで会員が映像コンテンツの評価を投稿できる機能では、開始から半年ほどで630万件の投稿があった」

NTTぷららの音楽配信サービス「ひかりTVミュージック」のテレビ用画面
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 インターネットのソーシャル・メディアやコメント投稿などと連携した、テレビ向けの視聴者参加型サービスヘの強い手応えを語るのは、NTTぷららの坂東浩二社長だ。同社は、NTTのFTTHを用いたIPTVサービス「ひかりTV」を提供している。

 ひかりTVの契約数の見込みは、2012年9月末に224万件。NTTぷららは画面上に視聴者によるTwitterの投稿を表示する「ツイッター連動機能」を、同年5月からひかりTV向けに同社が独自に提供するプロ野球中継の全試合で本格導入した。同年末までに定額制の音楽配信サービス「ひかりTVミュージック」や、電子書籍の配信サービス「ひかりTVブック」を相次いで投入する。これらのサービスや独自コンテンツの拡充などを軸に、2013年3月までに契約数を255万件に伸ばす目標を掲げている。

スマートテレビの本質は「システムとしてのテレビ」

NTTぷららの電子書籍配信サービス「ひかりTVブック」のタブレット端末用画面
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 NTTぷららがこの目標を実現するカギと見るのは、ソーシャル・メディアとテレビの連携や、スマートフォンやタブレット端末、パソコンを対象にしたコンテンツ配信サービスの拡大だ。いわゆる「ソーシャル視聴」と「マルチスクリーン」のサービスである。

 2012年12月に始める音楽のストリーミング配信サービスでは、開始当初に約100万曲の楽曲を用意。これを、いずれは数百万曲に増やす目標で、業界最安値でサービスを提供すると宣言した。同年11月に開始する電子書籍の配信サービスでは、マンガや小説、絵本、写真集などの幅広い分野の書籍を約5万冊配信する。

 これらの新サービスの主戦場は、「テレビ」よりむしろスマートフォンやタブレット端末といった携帯端末になりそうだ。いずれのサービスも、携帯端末のみの契約を可能にする。特に電子書籍の配信サービスでは、絵本や写真集を除くほとんどのコンテンツは携帯端末やパソコンだけで読める形になる。NTTぷららは既に、VODサービスでは同様に携帯端末のみで利用できる料金プランを提供中だ。まずは普及が著しく、インターネットの常時接続機能を備えた携帯端末からユーザーを囲い込み、そこからテレビ向けのサービスに誘導することが狙いである。

米国ボストンで開催された「Cable Show 2012」の米Motorola Mobility社のブースの様子。マルチスクリーン連携がテーマになっている。
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 これまで「テレビ受像機」向けのサービスを主な生業としてきたケーブルテレビ(CATV)事業者やIPTV事業者が、ソーシャル視聴やマルチスクリーンのサービスに傾倒する方向性は世界的な流れだ。「テレビ」というメディアの定義は、大きく変容した。国内外の放送事業者も同じ方向を向き始めている。これらのサービスが、インターネットのSNSなどで急速に広がる人と人のコミュニケーションを「テレビ」というメディアに取り込む大きなカギになると見るからだ(関連記事1関連記事2関連記事3関連記事4関連記事5)。

 インターネットのWebサービスを接点に大画面テレビと携帯端末をつなぎ合わせ、複数の機器によるシステムとしてサービスを提供する。携帯端末を大画面テレビのリモコンや入力用端末として利用することに加え、同じユーザーIDを使えば、大画面テレビと携帯端末、そしてユーザー同士でコンテンツを共有できるようになる。これが、この1~2年ほど世界規模で期待を集める「スマートテレビ」の本質的な姿だ(関連記事6)。