NECのグリーンプラットフォーム研究所(以前は、システムIPコア研究所)が開発を進めている、金融機関向けのFPGA設計環境が強化された。同研究所は1年ほど前に、この環境の核となる部分を発表している(Tech-On!関連記事)。金融処理のC言語アルゴリズムから、FPGAのプログラミング・データを生成する部分である。

図1●既存技術を使った場合(上)と開発中の設計環境を使った場合(下)の違い 1年前に発表されたのは、下のフローにあるヤマブキ色のハードウェア設計の部分の大半(C言語アルゴリズムからFPGAプログラミング・データ生成)である。今回、その前段に「SQLアルゴリズムからC言語アルゴリズムに変換する」部分が加わった。さらに、こうして作成したFPGAの設計データを瞬時に切り替えることで、顧客のITシステムの稼働中に金融処理アルゴリズムを変更できるような仕組みを開発した(図の「運用」部分)。NECのスライドをTech\-On!が編集。
図1●既存技術を使った場合(上)と開発中の設計環境を使った場合(下)の違い
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 開発中の設計環境は、時々刻々変わる状況に応じて金融処理アルゴリズムを最適化し、それを短時間にFPGAに実装することで、高速に処理することを狙う(図1)。従来、金融処理アルゴリズムはソフトウェアとして実装されることが一般的だった。しかし、最近では、ハードウェア化して、具体的にはFPGAに実装して、高速化を安価に行うことに注目が集まっている。この際の壁がFPGAの設計である。ソフトウェアとして実装されていれば、金融機関内の人員だけでも最適化はそれほど難しくはないだろう。

 一方、FPGAはハードウェアであり、金融機関内の人員だけでは最適設計は難しい。今のところ、「FPGAの設計は外部のエンジニアリング会社などに委託せざるを得ないだろう」(NEC)。NECが開発中の設計環境では、FPGAの設計部分も含めて、基本的に金融機関内で処理できることを目指す。外部へ仕事を出す時間が節約できる上に、機密漏えいを防ぐ狙いもある。

 なお、NECとしては、IT事業において、今回のFPGA設計環境をプラスすることで、競合との差異化につなげることを狙う。同社の発表によれば、2014年度中に、今回の設計環境を事業で活用したいとのことである(当該ニュース・リリース)。